嫉妬の限界

ライリー

第1話

いつも通り、帰宅ラッシュの影響で満員の電車で家に帰る。社会人になりたての頃はストレスに感じていたが、今はもう慣れてしまった。もちろん空いている方が嬉しいけど、満員電車はそんなに苦ではなかった。何も考えずにぼんやりとしていると、不意にスマホが少し振動した。確認すると、『紗夜』という名前の人物からのLINEが来ていた。

『今日はいつも通り帰って来れる?』

という内容だった。紗夜、というのは同棲している彼女の名前だ。そんな彼女からの連絡だった。

『今日はもうそろ帰れそうだよ。』

とだけ送っておいた。そろそろ最寄りの駅にも着く。床に置いていたカバンを手に持ち、直ぐにホームに降りれるようにした。そして、駅に止まる時に慣性がかかったのだが、隣にいたOLの人が寄りかかってきた。

「すいません…」

小声でそう言ったので、こちらこそ、と言ってホームにおりた。

自転車で5分、アパートに着き部屋の戸を開ける。

「おかえりーっ」

奥から声が響く。そしてすぐに、紗夜が駆け寄ってきた。

「ただいま、紗夜。」

靴を脱ぎ、部屋に上がる。

「今日の夜は、カレーだよ♪︎いっぱい食べてね。」

カレー。俺の好きな食べ物のひとつだ。それを聞いて、少し嬉しくなる。紗夜の作るカレーは絶品だ。そうして居間に行こうとすると、紗夜が突然立ち止まった。

「…どうかした?」

と聞いてみたが、

「…いや、なんでもない。早く食べよ。」

と返ってきた。なんでもなさそうなので、気にしなかった。






「うんま」

うまい。下手なお店にも匹敵するだろう。

「水分も取ってね。」

そういって、紗夜はお茶の入ったコップを持ってきた。

「ありがとっ」

グッ、と一気飲みした。プハーッと息を吐き出そうとしたら、妙な後味が口の中に残った。そうするとすぐに、体が熱くなってきた。

「な…んだ、これ…?」

体も思うように動かない。心臓はドキドキしっぱなしだ。

「今日、さ…女の人と近い距離にいたりした?」

なんのことだ?特に心当たりがない。

「いや…そんなことないと思う…」

「うそ!」

口調を強めて、紗夜が詰め寄ってくる。

「服に女物の香水の匂い着いてるじゃん。これ、私の使ってる香水の匂いじゃないし。」

よく考えると、帰りにOLさんとぶつかった時に着いたのかもしれない。そのことを紗夜に話す。

「ふーん、そんなことが…浮気ではない?」

そんなことない、と弁明する。

「そっか…でも、匂いがついてんのは本当だから、ちょっと…寝室行こ。」

何か言う前に、強引に紗夜は俺の腕を掴んで引っ張っていた。

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