第6話

出先での仕事は別に辛くはなかった。

いつもの会社とそこまで変わらない業務内容に拍子抜けした。

「これ、出張の意味あるのか…?」

とさえ考えたりする。

…そんな感じだが、ただ…一つだけ、気がかりなことがある。

「先輩!お帰りですか?」

この子…姉崎美弥ちゃん。

出張先の支部で働いている一つ下の子。

なんだか、懐かれてしまったようだ。なにかと俺に話しかけてくることが多い。

「ああ、まあ…ホテルだけどな」

「じゃあじゃあ、少し飲みに行きませんか?」

どうしよう…せっかく誘ってくれてるんだし、無下には出来ないな。飲みに行くくらいなら大丈夫だろう。

「少しな、じゃあ行くよ」

「決まりですねっ、早速行きましょ!」

明るく言う美弥ちゃんだったが、なんか…気のせいだと思うが、変な…ニヤついたのか?そんな表情が見えた…気がする。


「ビール2つ、ネギまと唐揚げ、あと枝豆も…先輩は、何食べますか?」

「あー、たこわさを…」

「たこわさもください!」

どこにでもあるような、普通の居酒屋。

あまり人はいないようで、空席が目立つ。

「先輩って、彼女とかいるんですかっ?」

「ああ、まあ一応」

「…へぇー、付き合ってどれくらいなんですか?」

「大学生の頃からだから、もう6、7年になるかな」

「へぇー、結構長いですね!もしかして結婚…とか考えてます?」

「んー、まあぼちぼち…」

「あまり待たせてあげない方がいいですよ、じゃないと他の人に取られちゃうかも?」

他の人…

それは不快だな、たしかにすこし考え始めた方がいいかも。

「先輩も、ですよ?」

急に顔を近づけてくる美弥ちゃんに、少しびっくりする。

「誰かほかに心奪われる女性とかがあらわれても、浮気は厳禁、ですよ?」

「そんなのは当たり前だよ。」

「それならよかったです♪」


そんなこんなで5日間はあっという間に過ぎ、帰る日となった。

「じゃあ、5日間ありがとうな」

「はい、先輩も、彼女さんと上手くやってくださいねー」

「ああ、もちろん」


さ、家に帰るか。


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