異なる種族同士の共同生活

 ある日『二本腕』という生物を友人から送られ、不承不承ながらも共同生活を始めることになる主人公のお話。
 いわゆる異種間恋愛、あるいは異類婚姻譚に近いタイプの作品です。ジャンルは『異世界ファンタジー』となっており、そのつもりで読むとなおその味わいが強く感じられるものの、でも同時にある種の思考実験的なSFとしての趣もあり、なかなかに厚みのある物語でした。
 主人公のプルイと『二本腕』のスーサ、登場人物はほぼこのふたりに絞られており、彼らの出会いからその関係性が成立していく過程を、非常に丁寧かつ細やかに著しています。特に興味を引かれるのはその書き表し方というか、視点が徹底して主人公のプルイに沿っているところ。彼の世界の常識や価値観、そもそもにして彼の存在がどういうものであるか。あからさまに伏せられたそれらの情報が、でも物語を追ううちに少しずつその姿を現していく。その感覚が心地よいというか、読書体験としての肝だと感じました。
 好きなのは主題というか本題というか、書かれていることそのものです。彼らの関係性。プルイの考えや価値観の変遷。そして、結びの描写。味わい深く、しっかりとお腹に残る強い物語でした。

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