友人から食料や労働力としてではない話し相手としての二本腕を贈られた四本腕のお話。
はっきりと言ってしまえば化け物が家畜である人間を飼うといった感じの話なのですが、主人公達四本腕側の常識ではそれが当たり前。
しかし、種族は違えど言葉は通じるからか主人公が二本腕と話をしてみたいと思っていたので、友人がわざわざ盲目の二本腕を連れて来てくれた所から物語は始まる。
物語が進むに連れて主人公が段々と贈られた二本腕を大切に思うようになっていくんですが、それと同時に四本腕の種族は明らかに二本腕と違いすぎる外見をしているのが判明していくのがいいですね。腕が四本どころか膝関節は二つで目が沢山あるとか…
最後はハッピーエンドな終わり方になっていますが、もしかするとメリーバッドエンドなのかもしれないのが良かったです。
完全に依存してしまい、通常の四本腕には無い狂気を孕んでいる主人公。これから二人がどうなっていくのか楽しみです。
後、友人めっちゃいい性格してますね!!!
ある日『二本腕』という生物を友人から送られ、不承不承ながらも共同生活を始めることになる主人公のお話。
いわゆる異種間恋愛、あるいは異類婚姻譚に近いタイプの作品です。ジャンルは『異世界ファンタジー』となっており、そのつもりで読むとなおその味わいが強く感じられるものの、でも同時にある種の思考実験的なSFとしての趣もあり、なかなかに厚みのある物語でした。
主人公のプルイと『二本腕』のスーサ、登場人物はほぼこのふたりに絞られており、彼らの出会いからその関係性が成立していく過程を、非常に丁寧かつ細やかに著しています。特に興味を引かれるのはその書き表し方というか、視点が徹底して主人公のプルイに沿っているところ。彼の世界の常識や価値観、そもそもにして彼の存在がどういうものであるか。あからさまに伏せられたそれらの情報が、でも物語を追ううちに少しずつその姿を現していく。その感覚が心地よいというか、読書体験としての肝だと感じました。
好きなのは主題というか本題というか、書かれていることそのものです。彼らの関係性。プルイの考えや価値観の変遷。そして、結びの描写。味わい深く、しっかりとお腹に残る強い物語でした。