王道ファンタジー好き、必読。
ダークな世界観が良い味出してます!
同じ砦で強制労働を課された年齢も出自もバラバラなキャラクターたちは『紅月の日』という大量の魔物が押し寄せてくるその日を乗り切るために結託しなくてはいけないのですが、それぞれが胸に抱える想いからなかなか一枚岩になることができません。しかしそれでも少しずつ、物語の中のイベントを超えていくにつれてお互いの理解が深まっていき、1つのチームとなっていきます。
戦闘に関しては全くの門外漢である主人公たちが魔物を前に動けなくなってしまったり、戦っている内に味方に逃げられて絶体絶命のピンチに陥ったりなどハラハラドキドキするポイントが作中にたくさんあって、知らず知らずのうちに先へ先へと読んでしまうような、そんな読み手を惹きつける作品です。また、充分な世界観の説明と情景・心理描写があるこの作品は、物語の展開が直感的にわかりやすくまとまっており、読んでいてまるでストレスがありません。
登場するキャラクターたちもそれぞれに個性が光り、特にイリスという王女のすがすがしいような判断力と行動力は見ていて気持ちがいいものです。
世界観良し、構成良し、キャラ良しと完成度が高く読み応えバツグンの作品です。王道ファンタジー好きの方、ぜひご一読してみてはいかがでしょうか。
様々な〝罪〟により帝国に捕らえられた者たち。彼らはその罪の罷免を条件に〝志願兵〟として魔物の攻め込む最前線に送られる。
主人公のガルムは兵士でも戦士でもない一般人。敵対国の人間であったという理不尽な〝罪に〟より捕らえられた彼は、送り込まれた砦にて、因縁深い相手と再会してしまい…………。
過酷な環境で、半ば捨て駒の如く兵役に就かされた罪人たちの、生き残りを懸けた戦いの物語。それは文字通りに武器を取って脅威に挑む戦いだけではありません。砦に集った志願兵同士の軋轢や衝突、思惑の読めない帝国兵たちへの不審から巻き起こる問題や争い。そんな過酷な最前線での日常が生々しく描かれています。
ファンタジーなバトル戦記と、閉鎖環境での人間ドラマ、ふたつの要素の絡み合う世界観。ひと味違う硬派なバトルファンタジーを求めている人にはオススメです。
第十一話まで読んだ時点でのレビューです。
世界観を共有する物語ということで「亡国の騎士とユリカゴの少女」を読んでみました。印象に残ったのは重厚さを仄かしながらはっきり感じられる繊細さ。各登場人物の心情、特にラルフの心の動きがやはり丁寧に書き連ねられています。
「辺境の歌」にもやはりその丁寧さが受け継がれていますが、変わっているのは規模感、展開の多様さ、と心情描写との比重でしょうか。しかし登場人物に感情移入できないかと問われてもそうではありません。時に苦悩があり、葛藤が見え、喜怒哀楽が確かに存在しています。
さて、今作「辺境の歌」は主人公ガルム・クランが様々な出来事に巻き込まれて「フォルザの壁」の先にある砦に送られるところから始まります。彼ら志願兵は毎月と毎年に一回押し寄せる魔物の軍勢から「フォルザの壁」同時に「帝国と人類」を守ることを課せられ、砦の修理や訓練を行うのですが……次第に読者はその様子に疑問を持つでしょう……。
浮き出てくる不安要素は危機感を煽り、読者の注目を引きつけます。「亡国の騎士とユリカゴの少女」とは一風変わった物語……しかし魅力は一回り二回り増し、これからのガルムたちから目が離せません。果たして彼らは『紅月の日』や『真紅の夜』を超えることができるのでしょうか……。
これからがとても楽しみな物語です。