間違いなく君だったよ

尾八原ジュージ

間違いなく君だったよ

 あっ、コンちゃん! コンちゃんやんか。


 よかった会えて。俺、ちょっとコンちゃんに話があってん。


 あんな、○○町の山の方に行くと、古い診療所の廃墟があるやんか。俺、こないだ友達とそこ行ってん。肝試しで。


 いうてもまだ昼間にな。暗なると怖いやんか。危ないし。で、ガラス扉開けてすぐ待合室、診察券とか出すようなカウンターもあって、向こうに診察室とレントゲン室。ほんで一番奥に処置室ってのがあってん。


 友達と奥から行くかってなって、その処置室のドアをガラガラって開けてん。そしたらベッドが一個ぽつーんとあってな。あと壁際に小さい洗面室と鏡と、足元にバケツが置いてあってん。


 ほんでベッドにな、布団がかぶせたんねん。それがなんか、膨らんでるように見えんねんな。で、コレ膨らんでへん? って言って、俺ががばーっと開けたんや。


 そしたら色の薄くなった千羽鶴が置いてあってな。げっ、なんやこれと思ったら、友達がギャーッて。


「鏡! 鏡!」


 言うから、俺も洗面台のとこの鏡見たらな、俺でも友達でもない顔がバーンと映ってて、こっち向いてんねん。


 もう俺も驚いて息止まりそうやってんけど、あれおかしいな、あいつの顔おかしない? と思ってん。そしたら友達が俺の首根っこ掴んでな。バタバターッと走って診療所を出たんや。


「めっちゃ怖かったな。もうここ来たらあかんわ。おいお前、大丈夫かボーっとして。な、もう来たらあかん! わかった!?」


 友達はそう言ってんけど、俺、あの顔のことが忘れられんでな。あれ、絶対コンちゃんやったわ。絶対やで。間違いなくコンちゃんや。


 まぁでもコンちゃん死んでへんしな。そしたら親戚か、他人のそら似ちゅう奴かもしれへんな。


 ちゅうわけで、俺とコンちゃんでもっかいその廃墟行こうや。


 あそこの幽霊がコンちゃん見たら、絶対驚くで。だってそのくらいそっくりやったもん。


 友達はもう行ったらあかん言うけど、な、行こ。だってあれ、絶対コンちゃんの顔やってん。間違いないわ。な、絶対行こな。

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