雪を溶く熱

作者 文長こすと

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★★★ Excellent!!!

映画「ディープインパクト」(1998年,スピルバーグ製作総指揮,ミミ・レダー監督)を思い出しました。隕石モノのパニック映画ですが、ハリウッド映画の主要テーマである「家族の絆」を描いた秀作です。女性ニュースキャスターのジェニーが大津波が迫る海岸で、確執のあった父親と和解するシーンには、ぐっと心を動かされます。似た感動(それ以上かも)をこの小説から得ました。

…お疲れ様、お父さん。13年ぶり。おかえりなさい。今までありがとう…美冬のこの台詞で涙腺崩壊です。

情景描写も素敵です。特に、
いずれ町はそっと消えていく。降り注ぐ雪の中に、かき消されていくように。
これは、堪りません!

ぐっとぐっと心を動かされた作品でした。

★★★ Excellent!!!

まず、なんといっても非常に質の高いモンスター・パニック作品です。近未来の日本に設定した舞台配置によるほどよい距離感が、奇怪なモンスターの存在の「真実らしくなさ」を巧みに取り除き、強度の高いリアリティを確保しています。
異質な危機に対する恐怖を緻密に構成していく文章こそがこの作品の魅力ですが、もちろん破壊のカタルシスも用意されています。ミリタリー的な関心も強い作品で、その点もリアリティに高く貢献しています。
しかしそれ以上に、主人公である美冬の心情にしっかりとフォーカスしている点も、この作品の魅力だと感じます。圧倒的な破壊的存在に対して、一個人のできることなど実質的にほぼゼロです。そこにあるのは行為ではなく、心境です。それはなにも新しいテーマというわけではなく、自然災害の多い日本では、古くから文学の主要なテーマになってきたものです。そんな系譜に、この作品はしっかりと連なっているように感じます。
美冬の感じ取った熱を、多くの人にも感じ取ってもらいたい。そう思わせる作品です。

★★★ Excellent!!!

同じプロットから小説を書くという企画の参加作。

幼馴染の男が久しぶりに訪ねて来て「今すぐ街を出よう」と主人公の女を説得にかかります。が、女はこれを拒絶して、一人で男を見送ります。

この指定プロットに沿ってお話が進んでいきます。

街に残ることとはすなわち死ぬこと。なぜ女は断ったのか。なぜ街が死んで行くのか。その部分を圧倒的熱量でもって書ききった怪獣パニック系SFになっているのです。

参加作随一のシャープな描写でもって緊迫感たっぷりに書かれた二人のやり取りと街に対する思い。

これは企画参加者必読の作品ですね

★★★ Excellent!!!

この作品の登場人物たちはみんな、自分たちの力ではどうにもならない大きな厄災の前で、それぞれの人生と懸命に向き合おうとしています。
美冬と秋人の感情の叫びは、読み手の皆さんの心を激しく打つことと思います。
この作品に出会えてよかったです。
記憶に残る作品になりました。