かえりみち
呉 那須
かえりみち
学校の終業のチャイムが鳴るとクラスのみんなは蜘蛛の子を散らす様に教室から去って校庭で遊んだり友達と一緒に帰ったりしていたのですが、私は補習のプリントを解かなければならず一人教室に残っていました。終わったころには夕焼け小焼けの音色が町中に流れていて窓から暗いオレンジ色に染まった校庭を見ると誰もいなくなっていました。筆箱をリュックサックにしまおうとした時に手が滑って筆箱の中身をすべてひっくり返してしまいました。鉛筆の尖った方を黒板に投げつけると無人の教室と廊下に高い音が響き渡りました。拾う気にもならなかったのでランドセルを背負って教室を出ました。
教員室にプリントを提出して外に出ると熱と湿気が私に纏わりついてきました。
横断歩道で信号を待っていると黒スーツを着て髪を七三分けにしたおじさんが私に声をかけてきました。一見お高そうな装いも脂でテカテカの顔と今にも舌を出して食い物にしようとする視線がすべて台無しにしていました。だから私はおじさんを道路に突き飛ばすと都合よくトラックが轢いてくれました。慌ててトラックから降りた運転手は俺は悪くない俺は悪くないぞ……と延々と独り言を言いながらおじさんを灰皿で殴っていました。めちゃくちゃな方向を向いた肉塊とは顔も合わせずに緑信号になった横断歩道を手を上げて渡りました。
帰り道は長くて喉が渇いたからと自販機で買った紙パックの牛乳にストローをさして飲むと泡立っていて臭くてとても飲めたものではありませんでした。ストローをゴミ捨て場に向けて紙パックを押すと白くて濁った液体がぴゅーーーっと勢いよく出ました。牛乳とゴミの混ざった匂いでゴミ捨て場に嘔吐しました。ゲロの中で人間の赤ちゃんがほぎゃほぎゃと泣いていたのでどこかどこかと山積みになったゲロまみれのゴミを探ったのですがどこにもいませんでした。結局私は諦めてゴミ捨て場を去りました。夕暮れの空を背に赤ちゃんはずっと泣き続けていました。
夜になってもまだ帰り道は続いてました。月は雲で隠れていたため灯りは住宅街から漏れる光と今にも灯りの消えそうな街灯だけでした。電灯の灯りの真下には蛾が何十匹も地面を這いずっていました。
やがて夜も深くなり家からの光は消えたので街灯の灯りを頼りに帰り道を歩いていました。
しかし、
フツン
という音とともに目の前は真っ暗になりました。
かえりみち 呉 那須 @hagumaru
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