あとがき

 大田康湖です。今回は『泥中の蓮』を読んでいただきまして、まことにありがとうございました。

 この話ができたのは去年の事ですが、アイディアはずっと前からありました。そもそものきっかけは、ドラマ『サザエさん』の中で、磯野家の歴史を書くという話があって、その中に、終戦直後、波平さんがヤミ買いを拒否したために、みんな苦労するという話があったのです。その筋そのものは、ハッピーエンドに終わりましたが、私の心には、一つの疑問が残りました。それは(もし、アンハッピーエンドにしてしまったら、どうなったのだろう)というものでした。

 それからしばらくたって 、「エホバの証人」の輸血拒否事件が起こりました。ポリシーのために、親が子の命を犠牲にしたのです。 私は、他人よりは彼等の事について知っていますから、なおさらショックを受けました。これが、さきのヤミ買い拒否とつなが ったのです。こうして、『泥中の蓮』の原案ができました。

 「暗い話だなあ」と思った方がほとんどだと思いますが、私はこの話に、私が今持っている最高の力を注ぎこんだつもりです。そしてこれが、私の疑問に対する、私自身の答えです。


 あとがき注釈


 発表当時の年代は1986年頃なので、本文で触れられているドラマ版『サザエさん』は1985年の星野知子版「サザエさん頑張る・主婦たちの戦後史」だと思われます。

 また、本文では回りくどく書いてありますが、私の家族が『エホバの証人』信者だった時期があり、内部事情を一般人よりは知っていたので他人事には思えなかったという背景があります。

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泥中の蓮(でいちゅうのはす) 大田康湖 @ootayasuko

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