本作の第一節は、作品世界に生きる魔獣の説明から始まります。「物語」を早く読みたいと願う読者にとってなんとも肩透かし。しかし、古い博物学を思わせる描写は実に詩的で、短いにも関わらず魔獣の実在を感じるようになります。
私たちが生きている世界とは違う世界で、生きている者が居る。その実在を感じさせるには、描写を誠実に積み重ねる必要があることを、作者は肌で分かっているのです。
描かれた世界は重くて、厳しい。戦士になれば覚悟は負わなければいけない。その重い物語を読み進めるうちに読者は思うのです。こんなこと、自分の日常には無かったな、と。
異なる世界を旅する、物語の醍醐味を存分に味わわせてくれる作品です。
矢口高雄氏は、いわゆるマタギにかかわる漫画を数多く描いている。冷酷非常にして美麗至極な大自然のドラマが、本作の第00話を読みながら思い起こされた。
むろん、本作と矢口高雄氏の漫画には一切関連はない。しかし、恐るべき猛威に怯えて理性を置き去りにした村人と理知的で沈着冷静ながらも余所者たる立場に諦観する狩人の対比は王道中の王道であり(※絶賛であるので念のため)、共通項でもある。
さておき、邪悪な化け物にどう立ち向かうかが本作最大の醍醐味の一つである。それは作者が自家薬籠とする独自の世界観を無理なく展開する土台となる一方、職人芸としての魔物狩りの技術を呈示しておりワクワクさせられる。卑俗な言い方で恐縮ながら、クールビューティーな彼女が立場の弱い人間には優しいのにも共感を覚える。
もう一つ、妖精のプークと申さばケルト神話のそれを思い出す。作品の発端と終焉にかかわる存在であり、仮に本作が活字本になったら頁と頁の間に潜んでいそうだ。
なんにせよ、是非とも続きを読みたい。
必読本作。
いわゆる「なろう系」「チート系」「無双系」ではない、
世界観の骨子に重点を置いた、かなり本格派のダークファンタジー。
簡単にあらすじを書くと、
地球ではない異世界で、主人公のユウリス少年が、
怪物と闘いながら成長していく物語です。
他のレビューにもありますが、
まず世界観の構築、完成度が群を抜いて素晴らしいです。
導入は魔物、妖精の簡易的な説明からはじまり、
その短い中にも図鑑の一ページを切り取ったような説明や、
本当に短いエピソードで楽しませてくれる仕組みがあります。
読んでいるだけで、こんな異世界である、
こういう生物や不思議がきっと棲息しているのだと、
すんなりと筆者の描く異世界へと引き込んでくれる魅力に溢れています。
基本的に一話完結のようで、
一話が数節に分かれて掲載されているので読み易いのもポイントです。
お話しも起承転結がしっかりとしており、
どうなるの、え、そうなのるの、は、そんなことが、と、
現在公開部分に関して、私は一気に読み進めることができました。
筆力も高く、描写と台詞で上手く物語が進行されていきます。
文量的には台詞よりやや描写が多いかもしれません。
台詞でぱーっと読むような作品ではなく、
じっくりと腰を据えて読むタイプの作品だと思います。
レビューを書きたいと思わせてくれる作品に出会えるのは、
とても嬉しいことですね。
タイトルにした「次にくる」は、
私の期待と、敬意をこめて。