阿僧祇の旗へ

自らを最強と自負し、己が武名を手中に収めるため海を渡り大陸に至った阿僧祇(あそうぎ)という一族。
長兄、正観(しょうかん)。
次男、穣(じょう)。
三男、澗三郎(かんざぶろう)。
四男、千歳(ちとせ)。
次女、京(けい)。
六男二女の内、大陸に向かったのは彼ら五人。その強烈な自信に違わぬ実力を持つ彼らは順当にその名を大陸に響かせつつあった。……彼ら兄妹のうち一人を除いて。
四男、千歳。
彼は阿僧祇にあってただ一人、突き抜けた強さというものを身につけていなかった。
しかし、長男正観はいつも言い、それに穣と澗三郎は首を頷かせるばかり。
曰く「阿僧祇においての最強は千歳」
それを認められないのは当の千歳本人と、母から「天才児」と褒めそやされてきた末妹たる京だけだった。