3文字

烏神まこと(かみ まこと)

1

「これ」

「あー、ありがと」


 バイト終わり、浩からいつものように手紙を受け取る。俺様のファンが俺様に宛てて書いたラブレターを、俺様以外の従業員が代わりに受け取ることは珍しいことじゃない。

 どうせ似たりよったりの内容だ。この思いに俺が応えることもない。だっていつかは親の決めた相手と結婚するし。

 読まずに捨ててもいいのだが、純粋な浩が見てる手前それは出来ない。家に帰ってから捨てよう。ラブレターをバッグの中に入れようとして、浩からの視線に気づいた。


「ん、どうした?」

「それ、いま読んでくれないか」


 静かにそう告げる浩の瞳は真剣そのもので、心臓が跳ねた。 

 その態度から想像される手紙の主を想像して顔が熱くなるなんて柄じゃないだろう。そんなわけないだろうと思いながらなんで期待してしまうのか。

 頭で鳴り響く警鐘を無視して、手は慣れた手付きでハートのシールをつまみあげ、封を切る。そこには女の子のものとは思えない、大きくて不揃いな文字が三つ書かれている。

 

『好きだ』


 体の内側から熱が噴き上がってきて、頭の先まで沸騰してしまう。なんで、どうして、この男はいつもシンプルで予想外なことをしてくれちゃうのか!

 

「答えをくれ」


 この真面目な男が嘘を付くはずがない。栗色の瞳が静かに俺の反応を待っている。曖昧にはぐらかすことはきっと許されない。事務所の無機質な空気を静かに吸い込んだ俺は、頭に浮かんだ家の問題を息とともに吐き出す。そうして、この男の思いを受け止める決意をした。

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3文字 烏神まこと(かみ まこと) @leaf6

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