第3話:僕の幼少期とあいつとの出会い
僕の家は、地元にある動物病院だ。
父さんは獣医で母さんはアシスタントをしていて、毎日が忙しかったけど、動物達に囲まれていて僕は寂しさを感じなかった。
僕のペットと言う訳では無かったけど、患畜達に餌を上げたり、散歩へ連れて行ったり、ブラッシングをしたりしていると、懐く様になっていた。
この時から僕は動物が大好きだった。
でも、同時に悲しい出来事も沢山遭った。
これは、僕にとって未だに忘れられない出来事がある。
最期を看取る事を拒否した飼い主が居た、その犬は老犬でもう自分の力で立ち上がる事も、トイレにすら行けない位だ。
この犬の名前は『ダン』と呼ばれていた。
その日の晩、ダンの心臓の鼓動が徐々にゆっくりと減ってきて今日がこの犬の最期の日だった。
その事を知らせようと父さんが飼い主に電話してたのだけど……突然大声で怒鳴っていた。
「生き物を何だと思っているのだ! この子は最期まで戦っているんだ! それなのに何故、貴方は見捨てる事が出来るんだ! 」
結局、最期まで飼い主は現れず僕達家族が看取った。
初めて見る「死」を見て、僕は悲しかった……
目が徐々に白くなって、辛そうに息をして、僕はその子を撫でる事しか出来なかった。
「おやすみ……ダン、ごめんね」
そしてダンは静かに息を引き取った。
この出来事を経験して、僕はこんな事を思っていた。
『もし、動物と会話が出来たら…… 』
動物は感情や気持ちが有るのだろうけど、それを表す事が凄く難しいし、人間には読み取る事も難しい。
僕にはそれが大きな超えられない壁だと思った。
徐々に成長して行く僕は、その壁は越えられないと思い獣医では無く人間を救う道を選んだ。
お互いを理解する事が出来ないと言う壁とペットを持つ者を助ければ不幸な動物は減ると信じて。
おかしい発想だと思う、ペットを捨てるのも人間だと言うのに。
でも……それでも、そうする事が正しい事だと思った。
そんな幼少期を過ごしていた時に、僕は幼馴染の女の子と出会った。
彼女と出会ったのは家の近くに有る公園だった。
僕は公園でいつも出会う野良猫に会いに来た。
この猫は人懐っこく、いつも喉を鳴らし僕の足に頭をこすりつけてくる。
僕は勝手にこの猫を「マギー」と呼んだ。
そんなマギーを探していると、草むらからガサガサと揺れ葉が掠れる音がした。
「マギー? 」
そう呼び、僕は草むらを覗き込むと、女の子が座って居た。
彼女はボロボロな服を着て、髪もぼさぼさで汚れていた。
そんな彼女は公園にある草を食べていた。
僕はその姿を見て化け物だと思ってしまい、「わぁ!」と驚いた。
「ごめんなさい‥」
とその女の子は言い、その場から立ち去ろうとした。
不思議に思い、僕は彼女に声を掛けた。
純粋な興味だったと思う、この子が何故こんな状態なのか。
「驚いてごめんね、どうして草を食べてたの? 」
女の子は無表情で答えてくれた。
「ご飯‥食べさせて貰えないの」
当時の僕はそれを『虐待』とは思っていなかった、いや、知らなかった。
「おいしいの? 」
「おいしくない……でもお腹空いた」
「じゃあ、これあげる」
そう言って僕は手に持っていた駄菓子屋で買ったお菓子を彼女にあげた。
ソース味の濃いお菓子、『キャベツ太郎』だったと思う。
彼女はそれを取ると直ぐに平らげた、よっぽどお腹が空いていたのだと思う。
「……ありがとう、私、冬美」
「僕は晴彦、細野晴彦」
自己紹介をすると、彼女は少し笑った気がした。
その時は良かったと思った、僕の行動が人の役に立てたのだと。
こうして僕はこの子にお菓子やおにぎり等をあげる事が日課となった。
彼女は徐々に打ち解け、彼女の事を色々と話してくれた。
両親は離婚し、父親は昼から酒を飲む様な人で酔っぱらっている時に殴られる。
グスグスと泣く彼女を見て、僕は何か出来ないか考えた。
「お巡りさんに相談しよう」
「でも……」
「大丈夫だよ! きっとお巡りさんが助けてくれるよ! 」
こうして僕は交番へ行き、彼女に何をされているかを話をした。
白髪が目立つ優しそうなお巡りさんは、うんうんと話を聞きいてくれた。
そして話を聞き終わり、直ぐに何処かに電話をしてた。
1時間位経って別の大人が来た、お巡りさんは
「彼らは暴力から守ってくれる人達だよと」
と言っていた。
そして彼女は交番を去る時こう言った。
「ありがとう……ハル君、絶対に忘れないからね」
そう言って彼女はその大人と共に何処かへ行った。
しかし、この僕の行動によって彼女が僕を殺す人になるとは思わなかった。
異世界転生したけどメンヘラサイコストーカーが追ってくる ゆにすた @yunisutaa
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