8 幸せを見つける
幸せを見つける
……幸せって、なんだっけ? (もう、忘れちゃった)
大きなビルの立ち並ぶ都心に、たくさんの雪が降っている。
……とても、とても冷たい雪だ。
その雪の中で、大きな駅のホームの上に、二人の同じ高校の制服をきた(コートは黄色と青で、違う色のダッフルコートだけど、マフラーは二人とも同じものに見えるふかふかの白いマフラーを巻いていた)とても仲の良さそうな少女が二人、にっこりと笑っている。
しばらくして、大勢の人たちがいる駅のホームに電車がやってくる。緑色の快速電車だ。
たくさんの人たちが緑色の電車の中から降りてきて、またたくさんの人たちが同じようにホームの上から緑色の電車の中に吸い込まれるようにして乗っていく。
でも、二人の高校の制服を着た少女たちは移動をしない。
やってきた緑色の電車に乗らずに(まるで水の流れに逆らうようにして)ただ、ホームの上の同じ場所にい続けていた。
動き続ける人の波の中で、まるで二人の高校の制服を着た少女帯のいる場所だけが、時間が止まっている(あるいは違う世界にいる)ように見えた。
やがて、動き出した二人はホームを出て、大きな駅を抜け出して、その近くにある小さな喫茶店に移動をする。
その喫茶店までの短い道のりを二人は、そんな真っ白な雪の降る、真っ白な色に染まる世界の中を、笑顔で、ゆっくりと歩いて移動をしていく。
二人は幸せそうに見える。
……本当に、幸せそうに、見える。
(いつまでも、いつまでも、幸せでいてほしいと思う。あるいは、願う)
横断歩道の赤信号で立ち止まったときに、「ねえ、星。あなた今、幸せ?」と海は言う。
「もちろん! すっごく幸せだよ! だって海がこうして、私とずっと一緒にいてくれるんだから」と、本当に幸せそうな顔をして、にっこりと笑って頭の上に少し雪の積もっている、ツインテールの髪型をした星は言った。
その星の言葉を聞いて、海はただ小さく微笑むだけで、なにも言葉を返さなかった。
そっか。と信号が青に変わったときに、心の中で海は言った。
今、星空をつかむ 終わり
今、星空をつかむ 雨世界 @amesekai
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