終章「真なる明日」

 賑やかな日昇商店街はバイバイ祭りに相応しい賑やかな雰囲気だ。

 俊雄の提案で俺たちはまだ来たことがない佐藤さんを連れてきたが、何の祭りの事が勘違いして浴衣で来てしまった。

 可愛くてたまらない美月の興奮のあまりに、俊雄の照れ臭い顔はからかわずにはいられなかった。

 ちょっとだけの力で腕で首を掴んで耳に呟く。

「ほらほら俊雄、可愛いっしょ? 今日ビシッと決まったら?」

「え、英志辞めろそれ。聞かれたら不味いぞ」

「そこはエイちゃんじゃねか?」

「お前さ......」

 大きな笑い声を出して女性達の注意を引いたみたいだ。何何と聞かれて俺は全身全霊で無言のままで耐えた。

 その後、商店街の何件の店を見回って交換エリアへ行くことになった。佐藤さんは他の人と交換をしたい事が最初から最も気になった点だって。

「そういえば、アイツらはどこにいやがんな? もう遅いぞ」

「彼にしては珍しいよね、遅刻なんて。英志君は電話してみたら?」

「連絡はしてみたが、返信はこねぇ」

 念のために携帯の顔面に何かが来たかを見ると、日付に気付く。

「あッ! 今日は19日だ......そうりゃ遅刻するよ」

「そうですね……でも松原君はともかく、高巻君はどうかな?」

「グッ」

 素直に好きな子に告白できないくせに、彼女から恋敵の話しを聞いたら明らかな動揺はちよっとも可愛くない。

 二人をどれだけ待ちたくても佐藤さんを存分に祭りを楽しんでもらいたいから、先に交換エリアに向かう事にした。

 美月は俺の手を引っ張って俊雄と佐藤を前に二人切りで歩かせる。

「悪戯はよくないぞ?」

「ちょっと押してやってるだけよ。それに英志君の手も触りたかった」

 ぐぅッ。コイツは効き目のある笑顔だな。本当に見る度に俺はどれだけ恵まれていると、いつも神様に感謝している。

「英志君だって今日大丈みたいだけど......本当に平気?」

「あぁ。今朝、清永さんを会いに行ったんだ。何だって言ったと思う?」

 美月は知らんと肩を竦めてキュートに首を左右に振った。

「その存分に生きてる目自由だなって。その後、無残に追い払われてしまったけど。冬馬さんだって何故かにまた文句ばっか言われちゃって」

「フフ、大変だよね」

「全くだ」

 黙ってしまったが、今日はあの日の事がまた夢にでたんだ。敬は病院に運ばれた後、連行されていた清永さんの言葉は身に切り刻まれた。

『今日の勝利は貴様のじゃない。あの自由に頂点に至った松原のだ。お前は自由になるなら、彼みたいに全力で生きるがよい』

 その日から俺は正真正銘新たな人生の一歩一歩を重ね始める。長年に明に会えなくても約束を常に胸にしまってあった。

 敬の提案でボクシングをやり始めて何と、おジさんによって俺が生れつきの才能があるそうだ。

 日頃にトレーニングを重ねて大学でも敬と共にその部に入った。

 明が戻った後でも、海外に出会った少女を紹介してくれる。彼女は俊雄の妹だと分かったら、世界は本当に小さいなと。

 そして、俺は彼女に惚れて恋人であることは最高の誇りである。

 だから今朝に清永さんと会ったら、俺の目に希望がある言ってくれた時に、認めてくれたことで涙が抑えきれなかった。それはうせろと言われた理由だった。

「英志君、素敵な笑顔だよ今の」

「ああッ、ありがとう! 実に美月を初めて会った時の事が思い出してさ」

「もおお、英志君大好きッ!」 

 上手く騙せたみたいんだ。

 前に歩く二人は順調のようで後で二人きりにしょうと美月との密談。

 交換エリアに辿り着いたら、運が良かったんだ。交換の良さそうなものばっかりだが、周りに人はあまりない。

「うわあああ。綺麗その人形!」

「ワー英志クン、そこノ着物ヲ見たいよネ......」

 変な喋り方は合図だ。

「困ったな。う~ん、わった! 俊雄、お前は佐藤さんと一緒に人形を見入ってやれよ」

「えッ。あ、ああ。は、はい!」

「早く行こう高山君!」

 腕をぎゅっと引っ張って佐藤は俊雄を持ち去った。俺たちに振り向いたら俺は親指を立たせ、美月は拳を上げてファイトと声無しで伝えた。

 御武運を、我が友俊雄よ。

 丁度美月とたこ焼き器を見ていた時に、誰かと肩をぶつけてしまう。

「おっと、すみません。ちゃんと前に見えなかった俺が悪い」

「ううん。謝らでよし。そちらは大丈夫?」

「はい。何なりと」

「良かりき」 

 気のせいが、お礼して立ち去ったあの男は何だかに凄く幸せそうだ。

「かっけぇなその浴衣」

「どうして英志君?」

「いいや、何もない」

 美月は持ってきた物の中にあのたこ焼き器との交換の掛け合いを見守った時、後ろから気配を感じた。

 威勢のいいに邪悪な不意打ちを見計らう拳を手に留めて、待っていた彼に振り向く。

「おっせな敬。あんな下手なパンチでやられんぞ?」

「なあに。挨拶をしようとしただけだ、英志」

「二人共! 何回言ったら分かるかな? そのような乱暴な遊びは辞めてくれないか?」

 敬の後ろから現れた明は俺たちに呆れそうな顔だった。

「コイツに言えよ明。俺はここに大人しくしてたのに」

「これっていわゆるライバルの扱いよアキ。英志との絆の証ってヤツ」

「変なこと言わないでくれる? もう二人共って本当に僕の手に余るよね~」

「大丈夫よ、明君」

 交渉に成功したらしい美月は重そうな箱を抱えながら、満足な笑顔で明に言いかける。そんな重い物を運ばせるのは気に食わなくて持ってあげたが、中身をちらっと見てたこ焼き器の他に桃色の卵焼きのフライパンや、かき氷機なんかがぎゅうぎゅうと箱に詰めていそうだ。

 よくこんな重い箱を平然として運んでいたな。我が麗しい彼女ならではってことだ。

「この二人はやり過ぎないように美月はいつも万全な準備だ。英志君は私を見る事だけでハートが目に付いて無力化だ。それに闘気を失った相手には敬君は一切手を出さない。ほら心配無用じゃないか?」

 言葉を交わさなくても、敬の目と合って全く同じことが考えただろう。滅茶苦茶な宣言だが、否定ができない事実ではある。

「ハハ。美月ちゃんがいて本当に心強いよね」

「フフン!」

「それはともかく......遅れてごめん。親父と話しててすっかり時間を忘れてしまった」

「僕も寮の入口でずっと敬君を待っていたよ。勝手に一人で先に行くのはちょっと」

「いいってことよ。俊雄と佐藤さんは今上手いところだから、邪魔しないようにあっちへ行こうぜ」

 商店街から流れてくる人々のせいで交換エリア段々混雑になり、俺たちはまた商店街に戻っていった。

 美月は行ってみたい露店はまだいくつかがあって、俺たちと後で合流すると約束する。本当に察しのいい子じゃないか、俺の彼女は......

 俺たち三人は敬と明の行きつけの喫茶店に入って窓側の席に座ってもらった。

 3月19日である今日は、あの時の事に懐かしく顧みる俺たち三人にとってある意味で記念日とでも言える。

「今朝、あの男を会いに行っただろう?」

「まぁな。今日だから早めに済ませておきたかった」

「兄さんに酷く叱られたらしいけど、そこはごめんね」

「いいんだ。冬馬さんのことだから仕方ないさ」

 敬は退院した後に色々聞かせてくれた。冬馬さんは明にやったこととか......事情は何であろうと、俺には許しがたいことだ。

 しかし、冬馬さんはあくまでも明が尊敬する兄である。清永さんをまだ憧れる俺は何かを言う権利は全くない。

 明によって集団の事が解決したから、冬馬さんに深く謝られたそうだ。警部として失格だと思って退職しようとしたらしいが、明はさせなかったみたいだ。兄は警部として町の治安を守りながら、自分は弁護士として法廷で困るを助ける。明はそのように兄弟としてこの町の正義を守りたいと。

「しかしここは本当に懐かしいところだよね、敬君。あの時は大変だったけど、あの日は君と友達になって本当に嬉しいよ」

「恥ずかしいこと言うなよ、アキ!」

「敬は人を向いて恥ずかしいとか言うのはおこがましいけどな。お前を見捨てないとか言いやがって」

「ぐぅぅ......」

 敬をそうからかっても、実はあの日の言葉は俺の宝物となった。俺を真っ直ぐに向き合って訳の分からない事を抜かし、俺とやり合って明を庇った彼は、恩人に違いない。

 刺された後、目覚めた敬は妙に何かが変わったような気がしたけど。大人っぽいなとこを失ったが、まだその生きた目でい続けた。気のせいだと思ったが、明にも似たようなことが思った。

 おジさん達もまた変わったというか変わっていないというか、とにかく敬はその日以来に中には何かの変化があった事だけが確かだ。命が危ない所なら、誰だってそうかもしれないが。

「ちなみに英志、例のアレを書き終わったか?」

「えッ? ああ、うん。明日置いておこうかと」

「何の話し?」

「聞いて驚け、アキ! 我が親友である英志は何と、詞の道に目覚めて歩みかけようとする」

 後で俺が書いていたヤツを勝手に見ちゃったコイツに一発を......

「えっと......つまり?」

「つまりさ! コイツは誌とか書いてたこと」

「えええッ! 英志君が?」

「まあぁ......ちょっとやってみたけど」

「どんな物なのかな? やはり美月ちゃんの恋歌とか?」

 目を輝かせる明は興奮し過ぎて、困った想像をやめてもらうにちゃんとしなきゃいけなさそうだ。

「神に感謝するヤツ」

「え?」

「俺、人生に謝ったことばっかして、大切に思ってくれた母さんまで酷ぇ迷惑を掛けたんだ。でも、俺は人生に諦めるところにいくつかの出会いに恵まれた。明に敬、そして清永さんまで」

「英志君......」

「だから今はこうして、想像が付かなかった程幸せになって、俺を守ってくれた神様に感謝するべきじゃないかと......そのつもりである日にペンを取ったら、腕が中々止まらなかったさ」 

 そして、見捨てられた者としてある場所がすぐに頭に浮かび上がった。きっと、神様も忘れられるのは人間と同じように悲しむだろう。勝手に想像したことだが、その時あの想いを込めてアレを書き出した。

 丁度昨日の夜に完成して物凄くすっきりしたのだ。

「英志君らしいことよね、ハハッ。素敵だと思う」

「神の仕業じゃないと思うけどね。お前は自分の力で手にした幸せだ。まぁ、お前の気持ちはお前の自由だけど」

「だろうな?」

「是非読んでみたい!」

「そ、それはねぇだろう、明!」

「ええ、どうして?」

 コイツは本当に〃恥〃という言葉が分からによな......

「諦めるがいい。英志ってそんなことに頑固だからな」

「うーん......じゃ、タイトル! それくらい教えてくれるでしょう?」

 それぐらいやらなければ、辞めてくれないな明は。

「わったわった......そんなに知りたいなら教えてやるよ」

 本当に苦労したタイトルだ。正直に言ってなぜそれにしたかと、自分の頭にパッと現れたしか答えられない。だが、いい響きだと思った。

 俺は与えられた自由、悲しみや辛さに溢れた人生を乗り越える強さに、自分を素直に向き合ってくれる友と呼ばれる人々。または、母さんに謝罪して立派な人生を生きて、憧れた人に認められて......この5年に積み重なった経験は代わりのない俺の物だ。もし過去に戻どることができたら、辛くても何一つも変わらない。

 だって、その全てがあってからこそ、今俺は俺でいられる。ひたすらにそれを感謝して俺を見守ってくれた神様に、その想いを込めてに授けるあの誌......

「そのタイトルは......」

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獅詩 @kovutl19

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