【あとがき】

子供の頃に遊んだゲーム「悪魔城伝説」が大好きで、ゲームのボスになるドラキュラがヴラド・ツェペシュという名前であることを知った。ドラキュラは有名な小説に登場するモンスターで、今や吸血鬼の代名詞、そのモデルになった人物だ。


 偶然手にしたドラキュラ伝説を巡る旅の本でヴラド・ツェペシュの興味深い人物像、そしてルーマニアのどこかミステリアスな響きの地名に心惹かれた。それがまさに中学生の頃。大人になってもドラキュラ公やルーマニアに心惹かれ続け、ついにン年越しの夢が叶い現地へ旅行に行くことができた。その時の感激は今でも忘れない。それから仕事をしながら休みをやりくりして全3回ルーマニアを旅行した。まだまだ行ってない場所や、一度は団体ツアーで訪れてバタバタと駆け回った場所にはまた行きたいと思っている。


 ドラキュラ公には最初はサブカル的な興味が強かった。あだ名になるほど串刺し刑を好み、反抗する地主貴族や不届きものには厳罰を下す苛烈な性格。しかし、一方で内政では中央主権を進め、大国オスマントルコと勇敢に戦う姿はまさにダークヒーロー。残虐な暴君と国を守り戦った英雄という二面性に惹かれた。


 ドラキュラ公について創作をしたいとずっとぼんやりと考えていた。この春からの疫病問題でふと時間ができたことをきっかけに物語を書こうとやっと思い立った。大好きなルーマニアの旅とドラキュラ公の物語を書きたい。そう思って読者が”史跡巡りを楽しみながらドラキュラ伝説を知る旅”をコンセプトに書き始めたのがこの作品。


 剣と魔法、ほどではないファンタジー要素を入れようと龍や水晶を登場させている。やや迫力不足なのはそこが中心ではないからだ。龍が暴れてしまったら元も子もない。物語の中盤まで龍の謎は自分でも考え中だった(衝撃の事実)。

そもそもこの物語のプロットは日本人がルーマニア人のガイドと史跡を巡りながら歴史を知る、なので行き先と訪問順を考えている程度だった。火を吐くでもない、嵐を起こすわけでもない、恐ろしい力ということで本編通りの力にした。これは人間にとって地味に恐ろしいものではないだろうか。


 本編に登場する地名はほぼ本物、場所や所要時間も地図サイトで調べて確認した。もちろん物語を盛り上げるためのフィクションもあるのでご了承のほどを。ポエナリ城からの地下道や、ブカレスト郊外の龍の丘のドラキュラの墓は創作。


 転生設定がふわっと入っているが、ちょっとわかりにくかったかもしれない。エリックはアレフ村出身のドラキュラ公の子孫、ラドゥは邪悪な魂の記憶が蘇った状態の一般人、シュテファンは子孫、メフメトは名前が同じで子孫でもいいかなくらいのセレブ、実は亜希を織田(オリタ)にしたのは日本の織田信長を絡めてみようかと思ったのだが、物語を進めていきながら蛇足に感じてそれはやめておいた。信長については勉強不足ということもあった。


 かなりのアドリブで完成した作品で、後から読み返すと矛盾に気づくかもしれないし、誤字脱字も結構あるのでこの先もブラッシュアップはしていく予定。この作品は人生で初めて書き上げた長編小説となった。粗削りではあるが自分にとっては大事な作品。


 最後までお読みいただき心より感謝です。読んでいただいた方の心に何か残せていたらいいなあと思っています。ドラキュラ公が好きなので、また違う形の物語を書けたらと思っています。


神崎あきら 拝


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ワラキアー眠れる龍の遺産ー 神崎あきら @akatuki_kz

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