第9話 閑話・2
No8
閑話・2
繁華街に着いた青年とジュディスは、指定の駐車場に車を停めて街中を歩いて見て回っている。
二人が並びながら街中を歩いていると、時々すれ違う歩行者から視線を浴びていた。
それは決して青年を見る視線ではなく、青年の隣をある金髪美女であるジュディスに向けられる視線だ。
ジュディスの見た目はハッキリ言ってそこらのモデルより顔とスタイルが良い。ジュディスがメディアや雑誌に登場すれば一躍のもとに名を広めるぐらいには見目麗しい。
だが、当の本人はまったくその手には関心がなく逆にそういう視線にはほとほとうんざりしている。
「まったく、どいつもこいつも視線がウザいわね。たかだかちょっと顔とスタイルが良いだけでしょうに」
「まぁまぁ、仕方ないよ。人は自分より優れた存在には少なからず嫉妬心を抱くものだからね。容姿、なんてのはその数ある中の定番の一つなんだからさ」
青年は毒舌をするジュディスを宥めつつ苦笑いを浮かべながら街中を歩いていく。
しばらく歩くとジュディスが一軒の店を指差しながらいった。
「ねぇ、ちょっと寄っていっていいかしら? 新作のバッグとポーチが出てたのよ」
「バッグもポーチもたくさん持っているけどまだ買うの?」
「別に買うとは言ってないでしょ? まずは商品を見て見なきゃ分からないのだから」
ジュディスは指差していた店へと入る。青年もジュディスのあとに続いて店内へと入った。
入店したお店はそれなりに有名なブランドショップ店だ。若年層から高年層まで幅広い人気を持っている。
青年とジュディスが店内に入るとショップ店員が挨拶してくる。
「いらっしゃいませ。本日はご来店ありがとうございます。当店では新作の販売をしております。それ以外にも商品を取り揃えてますのでご自由に店内をご覧ください。御用がございましたら、我々スタッフにお声掛けください」
そう言って女性スタッフは一礼して下がっていった。
「それじゃ、さっそく新作商品を見にいきましょっ!」
「えっ? 僕も行くのかい?」
「当然でしょ? 何言ってるのよ。男性が女性をエスコートするのは嗜みでしょ」
「こういう時だけ、フェミニズムを持ち出すのはズルくない?」
そんな愚痴は聞き入れてもらえず、店内の新作コーナーで新作商品を見て回った。
##
青年とジュディスは街中での買い物や食事を楽しみ現在は陽が暮れ、夜空が広がり星が煌めく時間帯になっていた。
タワービルの高層階にあるレストランで夕食を堪能した青年とジュディスは、展望ラウンジの一席でお酒を楽しんでいた。
青年は琥珀色をした年代物のスコッチウイスキーをロックで。
ジュディスは、ロングアイランド・アイスティーを。
「今日は久し振りに楽しかったわ。先にお礼言っておくわ」
「うん。僕も良い気晴らしが出来たよ。
こっちこそありがとう、ジュディス」
「なら、良かったわ。今回はたまたま面倒じゃない仕事だったから期間は短かったしね」
「そうだね、基本は監視で最後だけ手を出して終わりだったからね。割りと楽な『依頼』だったよ。『組織』も美味しい仕事だったんじゃないのかな」
「そうね、ローリスクハイリターンだったのは確かね。わたしたちもそれなりの収入だったわけだし」
「そうだね。新しいバッグも手に入ったしねっ!」
青年はジュディスの傍らに置いてある新しいバッグに視線を向けながら言った。昼間にジュディスと一緒に入ってブランドショップで買った新作のバッグだ。
ちなみに、お値段は数十万円だったが先日の『依頼』で得た収入に比べたら微々たる金額だ。
「貴方も何か買えばよかったのに。あのお店には男性用の商品もあったでしょ?」
「僕は別に欲しいものは無かったからね。普段はそれほど出掛ける事もないし、必要ならジュディスが揃えてくれだろ?」
青年の日用品類のほとんどは、ジュディスが揃えたものだ。青年は物欲が特になく滅多に欲しいものを言わないし、買わない。なので、ジュディスが間をみて買い揃えている。
「まぁ、強いて言うなら新しい『装備』が欲しいかな?」
「そこは、『研究施設』に行かないと手に入らないわ。既存の装備じゃアシがつく恐れがあるから」
「それは、分かってるよ。.....さて、そろそろ帰るかい? それとも、違うとこに行く?」
「そうね。せっかくだから違うとこに行きましょ。二人でゆっくり出来る時間が次にあるとは限らないし」
「だね。なら、次の店に行こうか、ジュディス」
「えぇ、『---』夜は始まったばかりよ」
青年とジュディスは寄り添いながらラウンジを出ていった。
執行者~黒の依頼書~ 紫煙の作家 @eleanoa1982
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