骨肉をかけた親子喧嘩
193×年の某所、生まれた瞬間からいつ死んでも全くおかしくない状況でございます。釣れる見込みのないなかで、ユーリは池に向かいました。
おっとユーリのいる池から幾分か離れたところに、すでに両親そろって子供なんて満足に面倒みられるはずのないほどにまで追い詰められた男がおります。視点をそちらに移しましょう。
子供は物乞いに行かせております。そして妻は、何も言わずに家を出ていきました。何時間かすると帰ってくるのでしょう。外で何をしていたのか、彼女は決していいません。言わなくても男にはわかっております。まだ比較的に若い妻が外でできることなんて限られております。考えるまでもありません。男は、無言で了承したようなものです。
いずれ、自分も子供をどこかその辺に置き去りにするべきだろうなと、冷静に考えているところに、なんの収穫もなかった息子が帰ってきました。
残飯すらとってこれぬ息子が憎らしい。自分が野良の犬を殺していた男からその犬を奪っていなければ、今日の飢えはどうなるところだったんだと、息子を叱りました。
しかし、息子の目はうつろです。額には脂汗を浮かべております。
なにを食った。もらった肉。そうか。色が生なのに灰色だった。そうか。洗ったけど。
息子の背後にまわり尻をみた。茶色く汚れており、下痢をしている。
息子が自分に黙って食べたのが腐肉だとしても、勝手に食べるのは許せなかった。
父親は息子の顎を殴った。
父さんだって、何もできないじゃない。何年も育ててきたじゃないか。今の話をしてるんだ、父さん。
腹を蹴った。口答えする息子を殺す勢いで蹴りとばした。そして頭を何度も叩く。
やめて、と息子は小さな手で父親の顔を引っ掻いたが抵抗はむなしく、息子が息絶えると、父親は犬をぶつ切りにしていた鉈で息子を分解した。
苦悶のまま固まった顔と目が合った。
やめろ、そんな目で俺を見るな……。父親は首を落とした。
顔は池に沈めることにした。後は妻とともに食べることにした。彼女も文句はないだろうし、言わせるつもりなどなかった。
ユーリは大物の予感に期待を膨らましたが、釣り上げたのは、見知らぬ少年の生首だった。ユーリは以前、誰かの腕を釣り上げていた。
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