第50話

物理実験をしながら…


実験用の鏡をセットしようとする手が震える。


二枚の鏡の間をレーザー光が行ったり来たり。


なかなか切り出せない。


「ロケット、作ってほしいな。銀河一つくらい飛んでいけるやつ。」


「冗談のつもりだったんだけど。」


「知ってるよ。言ってみただけ。」


少しの沈黙が流れる。


「ねえねえ、こんなバカみたいな私の話を聞き続けてくれるのは君が初めてなんだ。」


「そうだろうね。ほかの人にはハードルが高すぎる。光速を超えるのと同じくらい難しい。」


「そっか、君はそんな光速をこえるのと同じくらいすごいことをやってのけれちゃうんだね。」


「うん。」


「ありがとう。」


「それがずっといいたかったんでしょ?」


「ずっと言いたかった。」


実験を終えて、片づけをして、二人はそれぞれの家路につく。


「じゃあね、また明日。」


「また明日。」


眼鏡をかけた少年が彼の星に帰ることを誰も知らない。


「光速を超えることもできるんだけどね。」


そういって少年は笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

物理実験をしながら タケノコ @nanntyatte

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ