かつて貪るように身体を求め、溺れるようにつきあった女性、紫陽。
だが、「わたしがいたらあなたは教師になれないから」と主人公・葉太を捨てて去っていった人。
そんな彼女の口癖は、「捨てるなんて、もったいない」だった――。
時は流れ、念願の教師になった葉太は、ある年、忘れえぬ人、紫陽にそっくりな女生徒・桜子を受け持つことになる。
桜子と紫陽の関係は……。
桜子は本当に紫陽の娘なのだろうか……。
読み進めるたびに、紫陽さんの印象が変わっていき、ぐいぐいと物語に引き込まれます。
しっとりと謎めいた物語をどうぞお楽しみください。
読書の醍醐味のひとつに、考える楽しみがあると思います。
必ずしも、その内容に関係があるとは限らず、たとえば紫陽花の記述から、
『高知市の春野町に、【あじさい街道】ってあるな』
と考えたり、舞美さんの名前から、
『体育祭のフォークダンス』
に想いを馳せたりだとか(『舞美』→『マイムマイム』の連想)
私の場合は顕著だけれど、誰しもこういった経験はありますよね?
さて、本作はある謎があって、真実がなんであるかが明かされません。
私の考えは以下の通り。
🌱葉太先生の『元恋人』と『桜子ちゃん』には、親子関係がある
🍀『桜子ちゃん』と『葉太先生』には親子関係はない
元恋人さんと桜子ちゃんに親子関係がないというのは、かなり不自然な気がする。
私は、元恋人さんは浮気したりだとか、夫との間の子ではない子を夫との子として育てるような不誠実な人とは思えませんでした。
なので、元恋人さんは葉太先生と別れた後で桜子ちゃんのお父さんと結ばれたのだと考えたい(→この説を否定しそうな記述が一ヶ所あるけれど、真相は不明)
きっと様々な立場から、色々な考えを張り巡らせることの出来る物語であると思います。
どんなに考えても、たったひとつの真実には辿り着けないけれど、多くの可能性に想いを馳せるのは楽しかったりします。
時にはあなたも、思考の海に沈んでみませんか?
宇部 松清先生、素晴らしい物語をありがとうございます❤