今はもう無き東北方面寝台特急の車内鶴の世界が狭まったのと同時に人間界も狭まってしまったそんなことを改めて感じさせてくれる作品です鶴を通して繰り広げられる二人の物語道は分かれ、そしてまた交錯する想いとはなんなのか過ちとはなんなのか考えながら、自分の翼を見つめなおせるそんなオススメできる一作品です!
真っ白い雪原の上に、切なく静かに感情をこぼしていくようなお話でした。手紙を書くような明確さでは伝えられない気持ちを、折り鶴はたしかにあらわしているようでした。何か言ったら負けてしまいそうな、ぴんと張りつめた読後感。泣くことも声を失うこともできるラストだと思います。
小説なんて所詮作り話です。嘘に嘘を重ねて紡いでいく虚構の物語です。だからこそ、そこには「ほんもの」が宿らなければならない。ノンフィクションの、という意味ではなく、この世界の何処かにあるような必然性をもった物や人が。この小説の中には「ほんものの人」がいます。確かな息づかいが聴こえ、ありありとした気配を感じます。鶴に焦がれて、愛して、妬んで、憎んで。鶴になりたかった男が最後に辿り着く終着点を、あなたの目で確かめてみてください。
心の荒れが収まっていく物語でした。奇妙な二人の旅人が、寝台列車の車内で交流する姿は、緩やかな死への階段を下りていく鶴と、無限の未来が広がる鶴のよう。そしてひたすら変わらず、美しくも厳しい雪景色。車内と車外の対比も美しい話でした。