原初の詩

500文字で昔話風バージョン

昔々（むかしむかし）、あるところに。動（うご）くシャボン玉（だま）がありました。

動（うご）くシャボン玉（だま）は目（め）に見（み）えないくらい小（ちい）さい、息（いき）のかわりに水（みず）が詰（つ）まった特別（とくべつ）なシャボン玉（だま）。

空（そら）は飛（と）ばないけれど、海（うみ）の中（なか）をぷかぷか。

時々（ときどき）海（うみ）の底（そこ）についても割（わ）れない、本当（ほんとう）にすごいシャボン玉（だま）です。

すごいシャボン玉（だま）は、出（で）あったものを自分（じぶん）の中（なか）に入（い）れます。

するとそれを使（つか）ってシャボンの膜（まく）を自分（じぶん）で直（なお）します。

それから自分（じぶん）をちぎって真新（まあたら）しいシャボン玉（だま）になったりもします。

これがすごいシャボン玉（だま）の割（わ）れない秘密（ひみつ）。

膜（まく）の直（なお）し方（かた）、自分（じぶん）のちぎり方（かた）をすごいシャボン玉（だま）は膜（まく）の中（なか）に大切（たいせつ）にしまっていました。

ある日（ひ）、すごいシャボン玉（だま）は角（かく）ばった塊（かたまり）に出（で）あいました。

さっそくシャボン玉（だま）は角（かく）ばった塊（かたまり）を中（なか）に入（い）れます。

塊（かたまり）は外（そと）の殻（から）と、中身（なかみ）の「塊（かたまり）の増（ふ）え方（かた）」マニュアルに分（わ）かれました。

シャボン玉（だま）は何気無（なにげな）く「塊（かたまり）の増（ふ）え方（かた）」マニュアルを、自分（じぶん）の膜（まく）の直（なお）し方（かた）、ちぎり方（かた）と混（ま）ぜました。

するとなんだかとてもうまく自分（じぶん）をちぎれるようになりました。

その日（ひ）からシャボン玉（だま）はどんどん自分（じぶん）を増（ふ）やしていきました。

長（なが）い長（なが）い時間（じかん）が経（た）って、シャボン玉（だま）が何（なに）になったと思（おも）います？

それは、あなたです。

動（うご）くシャボン玉（だま）は今（いま）いる全（すべ）ての生（い）き物（もの）の先祖（せんぞ）になったのですよ。