第4話 修羅場なんだが・・・

ここで問題だ。現実で元カノと突然元カノの家で出くわしたらどうなると思う?

正解は、ドン引きされてお互い無言になる。

そう、まさに今その状態。完全に修羅場。

その沈黙を破ったのは元カノ—蒼雲 春歌のどこか他人行儀の声だった。

「な、何でここに・・・?」

普段からコミュ力抜群の茶髪少女でもさすがにこの状況には動揺を隠せないらしい。

「い、いや・・・ちょっとな、冬香に、呼ばれてだな・・・」

ヤバイ、まともに喋れる気がしない。

ラノベの主人公は元カノとも気にせず喋っている気がするが、流石に俺には無理だった。そんなに強いメンタルは生憎持ち合わせていない。

「ど、どういうこと?意味わかんないんだけど?」

「いや、説明すると長くなる」

これ以上話してるとメンタルが滅びるので多少強引に話を打ち切る。

すると、また沈黙が訪れた。

・・・冬香!アイツどこにいるんだよ!早く来いや。

アイツのせいでまた緊迫した空間に。

「あ、あのさぁ」

春歌がたどたどしく呼びかける。

「冬香とどういう関係なの?」

「お前には、関係ねえよ」

大したことない質問だし答えるのに何の苦労も要さない。だが、関係を断ち切りたっかというか、上手く言葉では表せない感情が渦巻いていた。

「そうよね、別に私には関係ないしね」

春歌は目をそらしながら、どこか寂しげな瞳でそう答えた。

俺はこの空気にもう耐えれず、

帰ろう・・・そう決めた。

じゃあな、と言うことはなく引き返そうと背を向けて歩き出す。

「はぁ・・・」

春歌は見えなくなり、帰り道を歩いていると、自然にため息が出た。

一分も話してないというのに、精神的に相当疲れていた。

この疲れが何に由来するものかは俺にも分からないが。

内心完全に忘れたつもりだが、本心ではまだ忘れられてないのかもしれない。

「あー!先輩居た!」

後ろから息切れをした冬香が肩を掴んできた。

今、俺は多少の戸惑いを感じていたのでこのタイミングで冬香が来てくれたことは結構助かった。

元はといえばこいつがこの原因なんだけどな。

「ど、どこにいたんですか、探したんですよ!」

「お前がどこにいたんだよ、アホ。おかげでこっちは軽く修羅場になってたわ」

「お姉ちゃんが家にいることさっき気付いたから、出くわさないように走り回ってたんですよ!私結構頑張りましたから!先輩が近道通るから!」

あ、そういえば近道を偶々知ってたから通ってきたな。今もそこ歩いてるし。

それに走り回ってたのは確かにいまの冬香の疲れ具合を見たらわかる。

良きは相当切れてるし、汗も結構かいている。

メイクが落ちるのも気にせず俺と春歌が出くわさないように俺を探してくれたんだろう。

「分かったよ。ありがとな冬香」

頭を撫でながらそう言った。

「い、いえ・・・わ、分かったなら良いんですけど・・・」

急に頬を紅潮させ、静かになった。

「お前急にどうした?」

「いや、走って疲れただけ・・です」

冬香は下を向いてしまった。

コイツが可愛いって言われている理由が分かった気がする。

何で急に静かになったのかは分からないが。まあ、ホントに疲れたんだろうな。

「何だ、お前ホントは可愛いのな」

「な、急に何ですか!」

もう一度、頭を撫でる。すると、さっきまでのモヤモヤした心が完全に吹き飛んだ。

「も、もう!早く先輩の家行きますよ!」

冬香が俺の手を払い、走り出す。

「今から歌作るのか?」

「当然です!時間は有限ですよ!」

後ろから見たら冬香の頬は真っ赤だった。

それはきっと暑いだけだろう。





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元カノの妹に脅されているんだが・・・ 冴えないkitoki @kai_tunndere

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