深くぬくもり溢れる愛

 贈与士なる架空のギルド職に就く少女ミア。彼女は若手ながらもその界隈では(良くも悪くも)有名である。世情を知り、贈与士として的確な目利きを持つ彼女に、知り合いのよしみと言って爵位を持つ男が頼み込んでくる――。

 登場人物たちの心の機微が丁寧に作り込まれている。
 特に子爵。ミアに訊ねられた問い掛けに迷いなく返した妻への熱い熱い想いの言葉で彼にぐっと惹かれた。かと思えば、慣習による嫁姑の軋轢を危惧して弱気を見せて台無しにさせる。しかしそれは何かを築く者、守るべきものがある者にとって至極当然なこと。身分の高い生まれである上、異国出身の妻に対する周囲の偏見など、対応を誤れば大事な妻の立場を悪化させるだけなのだ。妻は妻で慮る気持ちが強いが、かといってそこまで芯のあるメンタルを持ち合わせているわけではない。そんな二人の間を取り持つのが贈与士ミアなわけだが、彼女の方も話のなかに私欲が見え隠れしていてどうにも憎めない性格が出来上がっている。