第4話出会い

 今日は、外に出ないのがもったいないくらいの快晴だった。こんな日は学校にも行かずゆっくり散歩でもするべきだ、と勝手に自分の中で決めつける。

 普段、何の目的もなくこんなにゆっくり外を歩くこともない。きっと心もリフレッシュできる、いい機会だ。


 特に行く場所もないのでとりあえず学校方面に向かいながら、いつもとは違いいろんな場所に目を配る。


 一軒家のドアの前にハリネズミらしき置物、電柱に迷子犬の張り紙、大したものじゃないが今まで気付かなかったものが少しずつ見えてくる。


 少し歩くと、フラワーショップが見えてきた。お店の外にも色とりどりの花が出されていて遠くからでもすぐわかる。

 いつも俺には無縁だと思いながら通り過ぎている。

 まぁ、俺に限らず高校生という身分ならばそうそう関わりはないと思うけど。


 そんなことを思いながらもお店の前で立ち止まり、外に置かれている花をゆっくり眺める。

 普段ならばこんなことはしないだろう。

 花のことは全然分からないし名前も知らないけど、なんだか癒される気がする。


 お店の中には、外に置かれている花よりさらに多くの色とりどりの花が並べられており、ちょっとした異世界のようにも見える。

 それのせいもあってか店内に入るのは少し気が引け、俺はただ店内を眺めるしかできなかった。


 そうして一人店の外で突っ立っていると、不意に横から声をかけられる。

「中、入らないんですか?」

 慌てて顔を向けると、声の主は同い年くらいのすごく可愛らしい女子だった。まさにどタイプとも言えるほどのルックスで、心拍数が上がったのが自分でもわかった。

「あ、いや、ちょっと見てただけなので...」

 俺はたどたどしく答えるしかできなかった。

 そんな俺に追い打ちをかけるかのように、彼女の口から予想もしていなかった言葉が発せられる。

「間違ってるかもしれないんですけど、金村かねむら君ですか?」

「え?」

 俺はさらに心拍数が上がった気がした。

 ただただ、驚きでしかなかった。こんなに可愛くてどタイプな子に、しかも初めて会ったはずの子に自分の名前を呼ばれているのだから当然とも言えるが...

「間違ってましたか?ごめんなさい!」

 俺が黙り込んでいるせいで、彼女が慌てて申し訳なさそうに謝罪してくる。

 それを見てなんだかこっちの方が申し訳ない気持ちになってくるので、俺は慌てて否定する。

「あ、いや!間違ってないです。金村です。」

「よかった〜。あんまり自信なくて、間違ってたのかなって心配になっちゃいました。」


 このたった少しの会話だけでも、喋り方、表情、仕草、その全てが今まで感じたことないくらいの胸のドキドキを誘発してくる。

 どれをとっても嫌なところが見つからず、むしろもう彼女のことが好きなんじゃないかという錯覚さえ抱く。


 しかし、これは錯覚なんかではなかった。


 この時はまだ分かっていなかったけど、俺はもうこの時から彼女のことが好きになっていた。


 いわゆるだった。

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プリムラに想いを込めて Nana @Nana0525

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