第2話 三年越しの再会 秀side
香坂家の家政夫になってくれという話から三日後、俺は今香坂家の家の前に立っている。
この三日間のうちに金崎家では引っ越し&荷造り作業が急ピッチで行われあっという間にこの日がやってきてしまった。
最後に結佳と会話したのはおそらく小学校六年生位だったろうか。隣に住んでいるのにもかかわらずこの約三年間、結佳に会う事はなかった。
さすがにこのまま立ってるわけにもいかないので香坂と書かれた表札の下に設置されているインターホンにおそるおそる指を近づけて押す。
「ピンポーン」という甲高い音が響いて数秒後、ドアがゆっくりと開いた。
そこには、茶髪のショートボブが印象的な女の子が姿を現した。
「あの...秀さんですか?」
ドアの取手を両手で持ちながらこちらを上目遣いで見てくる。
そんな仕草に動揺してしまい少し遅れて返事をした。
「あ...あぁ...久しぶりだな。結佳さん。こうやってしっかり会うのは3年ぶりぐらいだよな。」
「う...うん、そうだね。」
「とりあえず、家に入って。」
「お邪魔します。」
そう言われるがままに秀は荷物を手に取り香坂家に足を踏み入れた。
台風でもあったのか??
これが秀の香坂家での第一印象だった。
玄関や廊下の先には脱ぎ捨てられた服や可燃ゴミが足の踏み場がないほど散乱していた。
果たしてここは人が住んで良い場所なのかという具合だった。
「あの...ご両親は?」
「二人とも長期の出張でいないの。次に帰ってくるのは三ヶ月後だったかな?」
秀はやっと自分がなぜこの家に呼ばれ家政夫をやることになったのか理解した。
つまりこの子は目も当てられないほど家事ができなく、その改善のために雇われたのだろう。
確かにこんな状況で過ごしたら気が滅入って生活なんて成り立たない。
そんなことを考えていると結佳が秀の肩を指でちょんちょん触れながら「あなたの部屋に案内するからついて来て欲しい」と言ってきた。
「は...はい」
いきなり肩をつつかれて動揺したため変な返事になってしまった。
そんなきょどった様子の秀をよそに結佳は歩いて行った。
階段を上り案内された部屋に入るとそこは何もない殺風景なクローゼット付きの15畳ほどの広さの部屋だった。
「この部屋は誰も使ってなかった部屋だからあなたの好きなように使って。」
「それじゃこれからよろしくお願いします。」
「は...はい、こちらこそよろしく...。」
そう言い終えると結佳は隣の自室に戻って行ってしまった。
「取り敢えず持ってきた掃除用具を使ってこの家を掃除しないとだな。」
「荷解きするよりも先にあれをなんとかしないと住めないし。」
「よし!やりますか!」
秀は気合を入れて香坂家の清掃に着手した。
まず秀は玄関から廊下の片付け及び清掃を始める。
「最初はゴミと服の分別からだな」
秀は、家庭用ゴミ用の袋とプラスチック用のゴミ袋を二つを用意し散乱していたゴミを分別しながら拾っていく。
次に脱ぎ捨てられた服はスペースを取らないように簡単にたたみながら除去していく。
拾っている途中に女性用下着がいくつかあったが心を無心にしてなんとか乗り切った。
服は脱衣所に持っていき一時的に置いておくことにした。
あらかたゴミを拾い終え袋をまとめ終えた。
そして秀は掃除機を取り出し細かいゴミの吸引をし、そして雑巾がけをした。
あれだけ汚かった廊下と玄関がみるみるうちにきれいになっていった。
そして秀は次の清掃場所であるキッチンとリビングにつながる扉を開けた。
予想はしていたがここもかなりの惨事だ。
食品トレーやコンビニ弁当の容器が転がり、しかも、食べ物が腐ったような異臭まで漂ってきていた。
秀は、流れるような速さで窓を開け、すぐさま腐ってしまった食材や生ゴミをビニール袋に封印した。そして先程と同様に散らばっていたゴミを片付けプラス排水溝や換気扇の清掃を行った。
作業を終えて時計を見たらもう夕方になっていた。
一段落して椅子に座っていると二階から結佳がゆっくりと降りて来る。
頭を半分出して秀が居ることを視認すると秀の正面まで歩き立ち止まる。
そして結佳は何かを言おうとして一度黙りうつむく。そして大きな深呼吸をして、
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「お腹減った。」
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あとがき
読んでいただいてありがとうございます。
誤字脱字があったら申し訳ないです。
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次回、三年越しの再会 結佳side
高校入学と同時にお隣さんの家に家政夫として働くことになったんだが?! @Gaku18
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