10 あなたのことが…

▪️


「あなたのことが大嫌いです。今後一切、私に関わらないでください」

高校二年生の春、俺は今、告白をされている。

人生初の女子の呼び出しに、心躍るものを感じたのだが、期待していなかった告白を受けてしまった。

童貞非モテキモヲタな俺だが、もちろん女子には興味はあるし、恋愛に発展できるのならしてみたいと考えたことがあるのは、一度や二度ではない。

自分で言うのもアレだけど、俺は顔はそこまで悪くはないと思っている。全世界の非モテな方々は誰もが思うだろうが、自分は決してブサイクな顔ではない。寧ろかっこいいのでは…と。

しかし、中身が大事とばかり言って、見た目に気を配らない男子諸君。君達はモテない側の人間だ。

だが俺は違う。見た目にも気を配り、誰にでも優しくして来た。キモヲタだけど面白いよなのポジションをキープしながら、いつでもモテる為の準備を怠らなかった。

…現実がコレだ。

「あの、──さん」

「名前、呼ばないで。気持ち悪い」

別に、嫌いではなかったけど、好きでもないクラスメイトAのポジションの人に、俺は聞いた。

「…なんで、俺はあなたのことが大嫌いですって告白されているんですか?」

問題はそこだ。

先程までうだうだ御託を並べてきたが、原点こそが問題だ。

俺が一体何をしたと言うのか。

「いや、クラスの人達皆気がついてるんだけど」

──は、その前置きに、全てを話す。


俺が、モテる準備をする為に頑張っているのに、皆は気がついていた。

そして、標的が決まる前に、自分は無理だと断っておこうと、そう言うわけだ。


「とりあえず、キモいからあと関わらないで」

そう言って、──は立ち去って行った。


その後も数人の女子達から、あなたのことが大嫌いです宣言を受け続けた。


「あの、いいですか?」

大人しそうな地味目の女子が話しかけてきた。

またか、あなたのことが以下略宣言。

「知ってる。関わらないからその宣言止めてくれ」

そう言って、その場を離れようとするが、腕を引っ張られた。

「なんですか?あなたも俺のことが大嫌い宣言の人だろ」

「私はあなたのことが大好きです!」

「…………は?」

思考が止まる。

いや、待て。

「…もう一回」

「…返事をくれたら、言います」

おそらく俺の聞き間違いではない。

「なん…で?俺のことが嫌いじゃあないの?」

しかし、彼女は首を横に振り、答える。

「…前から好きだったけど、自信なくて。でも、皆があなたのことが大嫌いなら、私はあなたと…その、恋、人になれる…チャンスというか、その、今が告白のチャンスでした!」

俺の目をしっかり見ているその少女に、俺は心を捕まれてしまった。

この子になら、騙されてもいい。

「俺も、今好きになりました」

その告白を受け止め、一歩前へ。

「俺と付き合ってください」

彼女は笑顔で、

「はい」

誰もいない校舎に好きを満たしていた。


「じ、実は、私もその、ヲタクです」

オタクをヲタクと言うところに、ホンモノを感じた。

「アニメとか語りながら、お互い好きって、いいですよね」

「…そうだな」

「そう言えば、今回の日朝枠見ました!?」

「あ!ということはお前もあのシーン見たのか!」

「はい!マジ今回の監督いい仕事しますよね!」

「それな!まさかヒロインの女の子が…」

二人は仲良く、語り合いながら、その顔は幸せに満ちていた。


二人がその後、どうなったのかはまた別のお話。

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Diary Life ゆゆゆ @yuma1225

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