2 あなたのこと

 あなたのこと


 私が初めてあなたに出会ったのは、中学生のときだった。

 出会ったときから、あなたは私の憧れだった。


 私には顔がなかった。私には心がなかった。私には夢がなかった。私には愛がなかった。つまり私は空っぽだった。私は、なんにもなかったのだ。(……そして今も、きっと、私はなにも持ってはいないのだ)


 ……でも、私の体はすくすくと成長していった。

 心は成長しなくても、体はどんどんと成熟していった。私は、間違いなく大人になろうとしていた。それが本当に嫌だった。

 大人になることが嫌なのではない。どちらかというと大人には早くなりたいと思っていた。私が嫌だったのは、心が未熟なままで、体だけが大人になってしまうことだった。

 心の成長をまたずに体だけが成熟してしまうことがすごく嫌だったのだ。だって、バランスが崩れてしまうのだから。

 すごく嫌で、すごく気持ち悪かったのだ。

 自分が醜い怪物になってしまうのではないかと思って、……すごく、すごく怖かったのだ。


 私は世界と調和していたかった。喧嘩なんてしたくなかったし、世界から異物だと判断されることをとても恐れていた。

 しかし、いずれ、このままだと私は世界と調和することはできずに、どこかの地点で、私は怪物になってしまい、私は世界の敵となり、私は世界から排除されてしまうのだろうと思った。もしくは山奥にでも隠れて暮らしていくしかないのだろうと思った。

 それが、本当に怖かった。

 怖くて怖くて仕方がなかった。

 ……だから私はずっと泣いていた。夜の中で、ぶるぶると寒さに震えながらずっと泣いていたのだった。


 ……そんなとき、私はあなたに出会った。

 私は一目であなたに憧れた。

 あなたは私の憧れであり、あなたは私の目指す目標になり、あなたは私の世界を照らす太陽になった。

 そして私は人形になった。

 人間ではなくて、人形になったのだ。

 あなたに操られるための、一つの自由な意思を持たない、操り人形になったのだった。(このとき、私は本当に、久しぶりに心のそこからほっとすることができた。本当に安心できる居場所がそこには確かにあったのだった)

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人形劇 マリオネット 雨世界 @amesekai

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