第104話 テレビを公開するの。
テレビを完成させたレイニィは、それを街にある姉のガラス工房の店先に設置した。
そこでレイニィは一日二回、朝と晩に天気予報を流すことにしたのだ。
正しく求めていた『お天気キャスター』をすることができ、レイニィは大喜びである。
街の人々の反応だが、初めて見るテレビにみんな興味津々で、いつも人だかりができるほどであった。
テレビには、レイニィが天気予報をする時以外は、店内の様子を映し出していたので、自分もテレビに映ってみたいと、店を訪れる客も一気に増え、姉のミスティは忙しさに悲鳴を上げることになっていた。
大人気のテレビであったが、レイニィには不満に思う点もあった。
それは、このテレビ、映像は流れるが、音声を流すことはできないということだった。
現在は、店内から外に聞こえるようにレイニィが大声を上げて天気の解説をしていた。
これなら、テレビに映さず、レイニィが外に出て天気予報をすれば済む話なのだが、レイニィとしては、テレビに出てこその『お天気キャスター』であり、そこで妥協するつもりはなかった。
また、街の人々もテレビに映っているからこそ、興味深くレイニィの天気予報を見ているのだった。
それにしても、音が出ないのは片手落ちである。レイニィは早急にそれをどうにかすることにした。
「マイクとスピーカーを作るの!」
「なんだ、それは?」
「今度は何を作られるのですか?」
こちらの世界にはまだマイクもスピーカーも存在しなかった。なので、レイニィにそう言われても、エルダもスノウィもわかるはずがなかった。
「遠くに声を届ける機械なの」
「遠くにか? 音を大きくする機械なのか?」
「音を大きくもできるけど、それより、以前作った『魔信』を光の点滅でなく声で伝えられるようにするの」
「ああ、元勇者に設置させているあれか。あれで声が伝えられるようにするわけか」
「そうなの。通信で通話ができるようにするの」
「遠くの人とお話ができるのですか! それは便利そうですね」
「それじゃあ早速作ってみるの」
レイニィは紙と導線と魔石、それに外枠となる木箱を用意してマイクの製作を始めた。
まずは、導線を何重にも巻いてコイルを作ると、それを紙に貼り付けた。
木の箱の入り口にその紙を張って貼り付けて、その裏にコイルの位置に魔石を設置する。
これで、紙が振動すると導線に魔力が流れるようになる。これがマイクとなる。
これと同じものをもう一つ作り、こちらは導線に魔力が流れると紙が振動して音が出るようになる。スピーカーとなるわけだ。
原理はモーターと発魔機と一緒だ。
その二つを導線で繋ぎ、マイクで発生させた魔力を、魔石で魔力を補ってやり増幅して、これをスピーカーに流すようにする。
これで、マイクとスピーカーの完成である。
「できたの!」
「ここで喋った声が、向こうで聞こえるのか?」
「そうなの。やってみるの。スノウィ向こうに行って聞いてみてなの」
「わかりました」
レイニィに言われて、スノウィはスピーカーの方に移動する。
「もしもし、スノウィ、聞こえますか?」
「レイニィ様、バッチリ聞こえました!」
スノウィが手を上げてレイニィに応える。
「おお、成功か! ところで『もしもし』とはなんだ?」
「それは……、あいさつみたいなものなの」
音が出るようになり、テレビの人気はより一層高くなった。
噂を聞きつけ元勇者がやって来た。
「これがテレビというものか……。すごいな!」
「あなた、テレビを見たことなかったの? ものと世界には一家に一台はあったでしょうに」
「俺がいた時代にはなかったぞ」
「そういえば、明治大正時代にはテレビなんてなかったわね」
「ラジオとは違うのか?」
「ラジオは映像は映らないわ。声だけよ。というか、ラジオもなかったの?」
「ラジオというものがあるのは聞いたことがあるが、見たことはなかったな」
「そういえば、電気も来ていない田舎の出身だったわね」
「まあ、そうだけど、田舎を馬鹿にするなよ」
「別に馬鹿にはしていないわ。それより、どうするの?」
「どうするとは?」
「わざわざ、来たのは、テレビの技術が欲しいからじゃないの?」
「ああ、そのとおりだが、いくらで教えてもらえるんだ」
「そうね……」
交渉の結果、レイニィは元勇者から技術料を取るだけでなく、新しく作ったモニターとカメラの提供とケーブルの敷設を約束させるのであった。
ようは、元勇者にケーブルテレビ局を作らせたのである。
そして、この世界で初めての、テレビ番組の放送が始まったのである。
もちろん。レイニィの天気予報番組は毎日組み込まれていた。
着々と『お天気キャスター』の道を歩むレイニィであった。
転生幼女が魔法無双で素材を集めて物作り&ほのぼの天気予報ライフ 「あたし『お天気キャスター』になるの! 願ったのは『大魔術師』じゃないの!」 なつきコイン @NaCO-kaku
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