本作は、少しドライなところがある高校一年生・薫が、同じ中学校出身の少年・悠と共に、吹奏楽部に入部してからの三年間を描いた青春小説です。
中学校でも吹奏楽部に入っていた薫は、コンクールで賞を獲れなくても「悔しい」という感情を持てなかった経験から、これからも音楽を続けるかどうか、入学当初は悩んでいました。しかし、そんな足踏みを経て飛び込んだ世界には、たくさんの新しい仲間たちがいて、待ち受けていた未知の音色が、あっという間に読者を夢中にさせました。
もっと上手くなろう、賞を獲りにいこう、と目標を掲げる部員たちと、担当するパートを巡って競い合い、コンクールに向けて切磋琢磨するうちに、薫は少しずつ変わっていきます。
そして、薫が変われば変わるほどに、吹奏楽は「一人ではなくみんなで」奏でるものなのだと、読み進めながら何度も実感しました。理想の音を求める中で、みんなの絆が強固になることもあれば、音を巡って部員同士が衝突するようなドラマもあります。
全員が、同じ方向を向いているわけではない――そんなメンバーで、調和の取れたメロディを生み出すことの難しさが、とてもリアルに描かれています。それでも、全員で壁を乗り越えようとする気概と、目標を達成できたときの喜びも。
楽曲に込められた思いをも掬い上げるような演奏シーンは、耳にする者の瞼の裏に、あるときは勇壮に、あるときは繊細に、物語と感情を想像させるリアリティに満ちていて、圧巻の迫力がありました。文章から聞こえてくるメロディに、読み手の心が揺さぶられたのは、音楽にかける薫たちの情熱と、作者さまの愛情のなせる業だと感じます。
そんな青春の日々を駆け抜ける中で、悠との関係が徐々に変わっていくところや、進級に伴って部の幹部を新たに決めようとする流れも、必見です。個性豊かで眩しいキャラクターたちのことが、どんどん大好きになっていきました。
彼らが奏でた青春を、最終話まで聴き終えたとき、爽やかで晴れ晴れとした気分になりました。熱くて、キラキラしていて、時々ほろ苦くて、愛おしい。そんな青春を、薫たちと一緒に駆け抜けてみてはいかがでしょうか。おすすめです!
高校の吹奏楽部のお話です。
楽器の経験度、コンクールへの意気込み、部内の人間関係など、多くの部員で一つのものを作り上げる吹奏楽部ならではのドラマが、豊かな筆致でリアリティたっぷりに綴られています。
中でも、演奏シーンの描写は圧巻。
一人一人の想いと音色。
文字を目で追っているだけなのに、音楽の彩りが脳内で鮮やかに広がります。
中学時代はコンクールで負けても「悔しい」と思えなかった主人公が、高校の吹奏楽部で多くの仲間と出会い、少しずつ変わっていく。
丁寧に描き出される心理や空気感は、彼ら彼女らの息遣いさえ感じられて、本当に素晴らしいです。
1年生を終えて、これからどんな音楽が聴けるのか、とても楽しみです。
吹奏楽経験者はもちろん、縁のなかったという人にもおすすめしたい一作です。
入学した高校の吹奏楽部は「正直下手ではないけど特別上手くもない」くらいの実力、なんだけど——
物語は主人公水谷薫が入学後、吹奏楽部へ入部を悩むところから始まります。
楽器経験者と未経験者の差、暗黙裏の実力社会、部内運営幹部との溝、コンクールメンバー選出のオーディションなどなどなど挙げればキリのない吹奏楽部あるあるには共感と読み進める指が止まりません。
「……僕/私、吹奏楽部じゃなかったし、いいや」と思った方、ちょっと待ってください!用語の解説等、そこかしこに作者様の配慮が散りばめられておりますのでご安心を!吹奏楽部を舞台としながらも、この作品で描かれるものは誰もが持っていてそれでいてもどかしい感情、そんな等身大の高校生像。これにはきっと誰もが胸に感じ入るものがあると思います。
そしてこの作品最大の魅力は、読みやすく丁寧な筆致に支えられた描写による圧巻の演奏! これぞまさに『読む』音楽!
部内で繰り広げられる人間関係を瑞々しく描く王道青春ストーリー! 元吹奏楽部の方もそうでない方ももう戻れない『あの頃』を思い返して一緒に悶えましょう!
吹奏楽は未経験なのですが、注目レビューで取り上げられているのを拝見して読み始めて以降、毎話楽しみにしております。
用語や楽器、吹奏楽部独自のルールなどが分からない人でも想像できるよう細やかに描写されており、未経験者の方でも物語の世界にどっぷりと浸かることができます。
人間関係や楽器への向きあい方、一人ひとりの吹奏楽に懸ける思いが伝わってきて、どの登場人物も応援したくなる一作です。
吹奏楽部の雰囲気が余すところなく情感豊かに表現されており、練習の場面などは登場人物たちの息遣いや緊張が感じられます。
作中でも吹奏楽の曲が紹介されているので、経験者の方は知っている曲が出てくるかもしれません。
吹奏楽部ってどんな部活かな、と気になっている学生の方や、吹奏楽未経験の方にこそおすすめです。これからも更新楽しみにしております。