ネタバラシ
これまで2人の人間のことを語ってきたが、俺たちのせいで人生をめちゃくちゃにされた人間は、何百人もいる。
そろそろ、俺たちの手口について知りたいだろうから明かしていこうと思う。
俺たちの主要メンバーは、俺を含めて3人だ。プロデューサー的役割を担っていたのが俺で、一人は鍵師、もう一人は電子機器などを作れるエンジニア。
まずエンジニアがテレビや美容家電、冷蔵庫などあらゆる家電機器にGPSや盗聴器、場合によってはカメラを組み込む。なぜ家電なのかって?家電なら動かすために電気が必要になるから、コンセントに差し込んで使うだろう?だから、電源が必要な機器であっても組み込めるっていう寸法だな。
で、その組み込んだ家電類は、フリマアプリやオークションアプリ、物々交換アプリなどで人に渡していく。高い良質の家電類が通常よりも安価な値段で購入できると知ったアホどもは、ここぞとばかりに購入してくれたよ。
もしかしたら、あまりの安さに疑惑を抱く慎重派な人間もいる可能性も想定し、出品者アカウントの写真は女性の写真を使っておいた。女性というだけでなぜか人は、疑心よりも信頼を勝手に抱くんだよ。本当にバカだと思うよ。
そして、アプリ経由で家電を入手した奴は、必ず家電を使い始める。コンセントに指した瞬間に、GPSなど諸々の仕込んだ機器が反応し始めて、情報が自動的に届くという訳だ。GPSさえ起動してくれれば、住所が分かる。オートロックなどのマンションだった場合は、多少面倒ではあるけれど、部屋番号などは簡単に調べられる。
あとは、家電に取り付けたカメラから部屋の様子や生活スタイルを導き出して、留守中に鍵師が技術を悪用して部屋に侵入する。そして、あらゆる角度から部屋を監視できるように隠しカメラを設置したら、仕込みは全て完了だ。
ここまで来れば、もうその住人に関する情報は全て入ってくることになる。隠し撮りしたプライベート動画は、マニアには高く売れるからネット上でちょろっとアップするだけで莫大なお金が転がり込んでくる。もちろん、このアカウントも俺たちが作るのではなく、お金を稼ぎたいと思っているバカな連中を利用している。
それに加えて、この人間をストーカーしたいと思うやばい連中たちには、住所や合鍵などを高値で売りつけてやったよ。
そして、ある程度のお金を稼いだ後は、最後の締めとして本人に隠し撮りした写真を送りつけ、端た金を請求し、金を払った場合はネットでアップされていることをバラし、払わなかった場合は会社の同僚に写真をばらまいて、どん底へと叩き落として終わりだ。
もちろん、警察に駆け込まれる可能性もあるから、最後の締めをする前に、俺たち以外にカメラを仕込んだ奴がいなかった場合は、フリマアプリなどで送りつけた家電からGPSやカメラなどを回収しておく。もし、合鍵を売ってやった誰かがカメラを設置していたら、俺たちのカメラから隠しカメラを設置している様子を使って、そいつを使って脅して更に金をむしり取る。お金をむしりとった後は、被害者女性にその動画を送りつけて、犯人として仕立て上げて終わりだ。
まぁ、兎にも角にも個人間取引を簡単に行えるサービスがどんどん出来たおかげで、俺たちの商売も右肩上がりに成長できているって訳だ。
もし、サービス運営側が商品チェックなどの手間暇を掛け始めたら、この方法も難しくなるだろうけど、営利目的でやっている連中たちが利用者をそこまで手厚く守るつもりもないだろうから、この先もずっと同じ手口で金を稼ぎ続けられるだろう。
本当に、金目的の企業が多くて俺たちは助かっているよ。それにどんな奴かも分からないような奴から物を購入するやつだったり、レビューは販売件数が多いからという理由だけで信用できると思ってしまう能天気な奴が多いことも感謝だな。
こいつは大笑いをしながら去っていった。
きっとまた、今もこいつのせいで悲しい目にあっている人がいるのだろう。
フリマアプリの罠 乃木希生 @munetsu
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