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二人でいられれば、それでよかった。
あの子さえいてくれれば、あの子のためと言っていられればこそ、こんな生も耐えていられたのに。
母さん以来初めて嗅ぐ自分以外の濃密な血臭に、口の中が泡立って噎せ返る。涙と血が混じったものが舌先を転がっていく。
これまでずっと食われる側だった私が食べている。瓜二つの双子の妹の、その肉を。私たち二人の間でだけ怪物だったものの肉を、食べていた。自分がされていたのを真似て、息苦しいのを無視して歯を立てる。まだ生温かい血液が、喉の奥に流れていった。
私たちの呪いがここにある。循環したいのだとあの子は言った。あの子が母を飲み込んだように、次は私の番なのだと。すべては巡る。呪いもまた、長い月日をかけて巡っていくのだと。
母は死んだ。あの子も死んでしまった。最後に、私だけが残った。
こんなものをあの子は美味しいと言っていたのかと、吐き気ごと飲み下しながら考える。
人間であろうと努力した。母の言ったように、人の中で生きていけるようにとこれから先を見つめてきた。
すべてとは言わない。けれど、きっとどこかが間違っていた。
姉妹の肉が美味しいだなんて、化け物以外の何物でもない。
「あなたたちは人じゃないの。だけど、人の中で生きられるようにしないとね」
母が言っていた。私たちは人ではないのだと。だからこそ、人でなければならないのだと。
ずっと、母は人を憎んでいないと思っていた。一度だって、恨み言を言わなかったと思っていた。
「化け物だったよ、私たちは」
血塗れの唇で、白くなったあの子に口づけをする。紅を引いて、口元を拭った。
母の隣にあの子を埋めた。自分がいつ死ぬかなんてわかりもしないけれど、それまでは何回だって会いに来る。
そして、あの子が大好きだった私の肉を、そこに埋めるよ。いつか、そこに行けるようになるまでは。
立ち上がって、自分のいる場所を思い描く。
あの村は、どこにあっただろう。
Re:peat 伊島糸雨 @shiu_itoh
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