第609話

「おぉ!なんすかそのでたらめな魔力量は!」


 自身の切り札の1つである亜技を使うためにコウは身体の中にあると思われる魔石から魔力を少しづつ引き出していくと、氷で出来た渦巻状の角が頭に作り出され、サンクチュアリを持つ手には氷のガントレットを纏い始めた。


 また新たに足にも鎧のようなものが作り出されていたので、もしかすると外套の胸部分に付いている結晶の形をしたバッジの魔道具は自身の魔力を高めてくれる魔道具なのかもしれない。


 そんな変化したコウの姿を見たアインは大きく目を見開き、予想外の展開に驚きを隠せない様子。


「あんまり時間は持たないから悪いけど早めに終わらせてもらうぞ」


 とりあえず亜技を使うにしても時間が限られているということもあって、コウは早めに決着をつけるために地面を一歩二歩三歩と蹴り上げ、その場から一気に動き出すと、アインとの距離を詰めることにした。


「はぁっ!」


 そのままアインの懐に潜り込むと、コウは手に持っていたサンクチュアリに魔力を込め、刃の穴からジェット噴射のように水を出し、勢いを付けながら石突部分を鳩尾目掛けて突きを繰り出していく。


「なかなか早いっすね!」


「まじかよっ!」


 しかしそんな鳩尾目掛けて繰り出した渾身の突きはアインの片手で意図も容易く受け止められてしまっており、まさか受け止められるとは思ってもいなかったということで、今度はコウが驚きの表情を浮かべることとなった。


「今度はちゃんと寝てるっすよ?」


「くっ...!」


 そして反撃としてなのかアインは右拳を高く振り上げ、そのまま振り下ろそうとしてきたため、コウは咄嗟に氷のガントレットが纏う腕で防御体制を取るかのように構えるも衝撃が来ることはなく、バキッ!という何かを殴る音が聞こえてきた。


 そのため、コウは頭を上げてみると、先程まで目の前で拳を振り上げていたアインはおらず、まさかの赤いオーラを全身に纏うライラがいた。


 また先ほどまで目の前で拳を振り上げていたアインは何処に行ったのかというと、コウの背後にある壁に叩きつけられており、苦悶の表情を浮かべ後頭部を摩っていた。


 どうやらライラがこっそりと隙だらけのアインの背後を取り、コウが攻撃される前に一撃を入れてくれたようである。


「大丈夫ですか〜?」


「あぁ助かった。今度は全員で行くぞ!」


「了解です〜!」


「キュイ!」


 とりあえず1人の攻撃では簡単に受け止められてしまうということで、今度は全員で攻撃を仕掛けることにし、各々は3方向に別れると、壁際で後頭部を摩っているアインに向かって迫っていく。


「こっちは手加減してあげてるっていうっすのに...いい加減にしろっす!」


 そんなアインはというと、迫るコウ達に対して少しだけ苛立ちが散り積もってきたのか、怒気をはらみながら足元に大量の魔力を込めると、津波のように巨大な水の壁を目の前に作り出してきた。


 このままでは津波に飲み込まれてしまうということなのだが、コウはサンクチュアリの先端を津波に向けると、小さな氷の針を打ち込んでいく。


 するとどうだ。小さな氷の針が津波に触れると同時に凍りついていき、飲み込まれる心配がなくなったということで、コウ達はそのまま突き進み、凍った津波を飛び越えた。


「どうせ来ると思ってたっすよ」


 そして凍った津波を飛び越えた先にはアインがまるでコウ達が乗り越えてくることを分かっていたかのように待ち構えていたのだが、気にせずライラ達と呼吸を合わせながら同時に攻撃を仕掛けていく。


 しかしながらコウ達の動きに合わせて足元から罠のように水の膜が作り出され、シャボン玉のような空間に閉じ込められることとなってしまうのであった...。



いつも見てくださってありがとうございます!


次回の更新予定日は多分10月3日になりますのでよろしくお願いします。

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青髪の冒険者 もうもう @moumou3745

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