第608話
滝があった場所から水面をゆっくりと歩きながらコウ達の立っている湖のほとりへ現れたのは明らかに人族ではなく、どちらかといえば魔族のような見た目をした者であり、白髪で短髪、肌は人族と違って青白く、興味津々な眼をこちらに向けていた。
「見覚えのある魔力と思ったすけどあの御方の血縁者の方っすか」
そしてコウのことを品定めをするかのようにじっくりと全身を見終わると、目の前の魔族だと思われる人物は意味深なことを呟きだす。
確か以前、エルフの森で出会った巨大なスケルトンもあの御方と言っていたのだが、いったい誰なのだろうか。
まぁ目の前にいる魔族の言い方的に自身に関わる重要な人物ということだけは何となく分かる。
「あんたは誰だ?」
「俺はアインっす。あの御方の血縁者ってことは応援に来てくれたんすよね」
「応援?何のことだ?」
「あれ?違うんすか?てっきり近くの街を襲う手伝いに来てくれたと思ったんすけど...」
とりあえず会話が出来るため、少しでも情報を引き出そうとしてみると、目の前の魔族はどうやらアインという名らしく、ここから近くの街を襲う準備をコウが手伝いに来てくれたのだと勘違いしていたようだ。
「んなわけないだろ。というかローランを襲う予定なら見逃すことは出来ないなっ!」
「うわっ!危ないじゃないっすか!」
帝国の二の舞いになってはいけないと思ったコウは不思議そうな顔をしているアインという魔族に対して先手を取るかのように手に持っていたサンクチュアリを横に振り切るも、ひらりと避けられてしまう。
そんなコウ達のことを敵だと判断したアインはすぐさま距離をその場から取るように下がると、水面から幾つもの水球がまるでシャボン玉のように浮かび上がってくる。
「同族では争いたくはないっすけど...暫く君には寝てもらうっすよ!」
そしてアインはシャボン玉のように水面から無数に浮かび上がってきた水球に向かって指先を振るうと、今度はコウ達に向かって次々と襲いかかる。
「あんなに沢山の水球は避けられないです~!」
「キュ!」
「誰がまともに受けるかよ!氷壁!」
そのため、コウは対抗するかのように自身の目の前に盾として巨大な氷壁が地面から天井に向けて伸びていき、次々と襲いかかる水球を全て受け止めていく。
しかしこのままでは防戦一方なので、ライラと目で合図し、息を合わせながら氷壁の左右から飛び出すも、そこにアインの姿は見当たらなかった。
「じゃあゆっくりと寝てて欲しいっす!」
「なっ...!」
何処に行ったのかと思い、目を動かしながらアインの姿を探していると、背後から声がし、振り返ろうとするも横腹から鈍い痛みと共に重い衝撃を感じた。
その衝撃の正体とはアインの回し蹴りであり、コウはその場から勢いよく吹き飛ぶと、壁際へ叩きつけられることとなる。
「かはっ!」
「コウさん!」
「キュ!」
そして壁際に叩きつけられたことにより、肺から無理やり空気を押し出され、横腹と背中がじんじんと痛むが、身体が頑丈なのと身に纏っている該当のお陰によって骨が折れたりなどの怪我は幸いにもしていない。
まぁアインにとってコウは同族ということもあって殺す気などはなく、手加減をした回し蹴りなのだが、それが伝わる訳もない。
ただそれが適用されるのはコウだけであり、人族であるライラや魔物であるフェニなどには残念ながら別の話。
「よしよしこれでいいっすかね?あとはそこの人族と魔物はいらないんで死んで下さいっす!」
そしてコウが壁に叩きつけられたことによってライラとフェニへアインの魔の手が伸びようとしたため、そんなことはさせまいと、軋む身体を無理やり起こし、身体の中にあると思われる魔石から魔力を引き出していく。
すると外套の胸部分に付けていたの結晶の形をしたバッジの魔道具がコウの身体の中にあると思われる魔石から引き出した魔力に呼応するかのようにキラキラと光り出すのであった...。
いつも見てくださってありがとうございます!
次回の更新予定日は多分10月1日になりますのでよろしくお願いします。
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