第607話

「おっ...次の階層の入り口みたいだな」


「次はどんな感じなんですかね〜?」


「キュ!」


 巨大な石の扉を通り抜け、冷たい風が吹き上げる石の階段をゆっくりと下りていくと、ようやく階段の終わりが見えてきた。


 そのまま階段を全て下りきると、そこには先程よりも小さな石の扉があったのだが、目の前に立つと、ずりずりという音を立てながらゆっくり扉が開き始める。


 そして扉が完全に開き切ったということで、次の階層はどんな感じになっているのか少しだけ顔を出して中の様子を覗いてみると、そこそこの広さをした湖が姿を現す。


 ちなみにそこそこの広さはどれくらいかというと、湖のほとりを一周するのに大体30分くらいで済むような大きさであったりする。


「今度は湖か」


「中心にある滝は上の階層から落ちてきてるんですかね~?」


 そんなそこそこの広さをした湖の中心には滝のように天井からは大量の水が降り注いでおり、もしかするとコウ達が先程までいた上の階層から落ちてきているのかもしれない。


 とりあえず外への出口を求めて下りてきたのは良いが、果たして本当にこのまま進んで良いものなのだろうか?ということや、そもそもこのダンジョンに出口はあるのだろうか?などの疑問がふと思い浮かんでしまう。


 まぁ実際にはそんなことを今考えたところで意味もないのでコウは思考を切り替えて、この階層から下りる場所もしくは外への出口に繋がりそうな手掛かりはないかを探すため、コウ達は扉を通り抜けて湖の階層へと入っていくことにした。


「一応ここもさっきの魔物みたいな奴がいないか注意しないとな」


「見た感じまた出て来そうですよね〜」


「キュ!」


 さて...扉を通り抜けたコウ達はというと、早速湖のほとりを歩きながら先程のような魔物がいつ出て来ても良いように武器を構えて警戒しつつ、周囲の探索を行い出すことにした。


 そして暫くの間、湖のほとりを30分ほどぐるりと歩き回り、最初に入って来た入り口へ再び到着した訳なのだが、この湖には1匹も魚などが見当たらず、魔物が出るような気配も一切なかった。


 まぁ魔物が出ないなら出ないことに越したとはないのだが、だとするのであればここは何のために必要な空間なのだろうか?


「ん〜何もなかったですね〜」


「そうだな。あるとすればあの滝の場所だけど...とりあえず足場を作っていくか」


 とりあえず情報を整理すると、残り探索していない場所といえば、湖の中心にある滝だけとなるのだが、そこまで向かうのにはコウが足場を作らないといけない。


 ということで、コウは湖の水際に近づくと、透き通った水に指先を入れ、中心部にある滝に向けて足場を作るために魔力を流しながら凍らしていくことにした。


 そしてピキピキと音を立てながら湖の水は凍っていったのだが、滝まで半分ほど氷の道が作られると、天井から降り注ぐ水量が何故か減っていくではないか。


「あれ~?滝が小さくなっていきます~」


「本当だな。まだそこまで何もしてないぞ?」


「キュ?」


 そんな水量が減っていく滝へコウ達は注視していると、遠目で分かりづらいが先程まで大量の水が降り注いでいた滝の中心部に人形の何かが水面に立っているのが見えた。


 そのため、新たな魔物が現れたと思い、各々は警戒しつつ様子を窺っていると、その何かはコウ達の存在に気付いたようで、水面の上をゆっくりと歩きながらこちらに向かってくるのであった...。



いつも見てくださってありがとうございます!


次回の更新予定日は多分9月28日or29日になりますのでよろしくお願いします。

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