第606話

「回収するか...って泥みたいになってないか?」


「なんなんですかね~これ~?」


「いやまぁダンジョンの魔物のことはよく分からんな。前行ったところはこんなことにならなかったし」


 ということで、早速コウは倒した鰐の魔物を収納の指輪の中に回収しようとした訳なのだが、死骸に触れようとすると、どろどろとまるで泥のように溶け、足元に流れ出した血とともにダンジョンへ吸収されるかのように染み込んでいった。


 また鰐の魔物の背中に刺さっていた冒険者達の物と思われる剣がカランコロンと音を鳴らしながら落ちていき、吸収することなく足元に転がっていたので、いったいこのダンジョンがどういう仕組なのか訳が分からない。


「ん?宝箱か?」


「みたいですね〜鰐の魔物を倒したからでしょうか〜?」


 そして目の前にあった泥の塊が全てダンジョンに吸収され終わると、そこに現れたのは宝箱の形をした木箱のような物であり、鰐の魔物を倒した際のご褒美として出てきたのかもしれない。


「とりあえず罠っぽいのも仕掛けられてないし開けてみるか」


「何が入ってるか楽しみですね〜」


「キュイ!」


 一応、見た感じ罠などが仕掛けられている様子もないので、中に何が入っているのかを確認するために宝箱の形をした木箱を開けてみると、そこには宝石のようにキラキラとした未加工の鉱石がたんまりと入っていた。


「宝石みたいですね~」


「キュ!」


「魔道具とかのが欲しかったけど...まぁしょうがないか」


 正直なところ魔道具などの有用性がある物が欲しかったのだが、とりあえず貰える物は貰っておこうの精神なので、コウはそのまま宝箱の中に入っている鉱石を収納の指輪の中に仕舞い込んでいく。


「あとは落ちてる剣とかも回収しとくか」


「遺品ですもんね〜」


 またついでとしてコウは足元に転がっていた冒険者達の物と思われる剣も収納の指輪の中に全て回収していくことにした訳なのだが、回収している途中でこの広い空間に地響きのようなものが急に鳴り響き出した。


「ん?何の音だ?」


「目の前の滝が割れて来ます〜!」


「キュ!」


 一体何事かと思っていると、鰐の魔物が現れた小さな滝が割れているというライラの声が聞こえてきたため、そちらに視線を向けてみると、確かに左右へ割れようとしているではないか。


「石の扉...?」


「なにか出てくるのでしょうか~?」


「キュ?」


 そして小さな滝がしっかりと2つに割れると、そこに現れたのは巨大な石の扉であり、今度はその巨大な石の扉は大きな音を立てながらゆっくりと開き始め、奥から何か出てくるのかと思ったコウ達は武器を再び構えたのだが、開き終わったとしても何かが現れるようなことは無かった。


 そのため、ゆっくりと近づいて扉の奥を見てみると、そこには石の階段が地下深くまで続いており、まるで早く降りて来いと言わんばかりに奥からは冷たい風が吹いてくる。


「なんか招かれてるみたいだな」


「どうしますか〜?」


 本当のことを言えば、一旦冒険者ギルドへと帰り、このことについて報告をしたいところなのだが、後ろを見ても入ってきた入り口は一向に開く様子がない。


「んー...後ろも開かないみたいだし進むしか無いよなぁ...」


「そうですよね~...」


 そのため、現状の選択肢としては腹を括って巨大な石の扉を潜り抜けて地下へ続いていく階段を下り、このままダンジョンを進んで行くしか無いだろうか。


 ということで、コウ達はこのダンジョンから抜け出すための出口を求め、地下深くまで続く階段を一歩一歩踏みしめながら下りていくことにするのであった...。



いつも見てくださってありがとうございます!


次回の更新予定日は多分9月26日になりますのでよろしくお願いします。

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