第605話

「キュ?」


「足元にあった水が無くなっちゃいました〜」


「なんか嫌な予感がするな...」


 そんな足元にあった全ての水が鰐の魔物の身体の下へ集まり終わると、何だか嫌な予感がし、何が起こっても対応出来るよう警戒しながら身構えることにした。


「ガァァァアアア!」


 そして様子を窺っていると、鰐の魔物は怒りを爆発させるかのように咆哮したのだが、先程まで身体の下に溜め込んでいた大量の水がコウ達に向かって、まるで津波のように押し寄せてくることとなる。


「ひ~!こんな狭いところで津波なんてやめて欲しいです~!」


「キュイ~!」


 確かにライラの言う通り、こんな狭い場所で津波なんてたまったものではない。


 もし津波に飲み込まれてしまったら圧死や溺死をしてしまうかもしれないし、例えそのようなことにならなくとも壁際が水を落とす作りとなっているため、津波に押し流されてそのまま水と共に何処まで落ちていくのか分からないからだ。


「舐めるなよ!」


 そんなコウは鰐の魔物から押し寄せる津波を防ごうと、右足に魔力を込めて地面を強く踏みつけた。


 すると足先から波紋のように地面はピキピキと音を立てながら凍り付いていき、押し寄せる津波どころかその先にいた鰐の魔物まで一緒に凍りついたのだが、氷漬けになったところでぎょろりと目玉が動いていたため、まだ生きている様子。


 ただ鰐の魔物は氷漬けになってしまっているということは動き出す心配が無いということなので、コウはこの隙を逃すまいと一気に動き出す。


 そして足場を幾つか作り出し、コウはある程度の高さまで駆け上がると、両足に力を込めて高く飛び、鰐の魔物の真上を取ると、全体重を乗せて勢いよく手に握っていたサンクチュアリを強固な鱗が鎧のように守るであろううなじ目掛けて振り下ろしていく。


 しかし鰐の魔物は待ってましたと言わんばかりに全身を包んでいた氷を振り払い、大きな口を開けて真上から勢いよく落ちていくコウのことを迎え入れる体勢になろうとしだす。


「なっ...!動けるのかよ!」


 そんなコウは空中では身動きが取れず、全体重を乗せながら勢い良く落下しているため、このままでは他の冒険者達と同じく餌食になってしまう!と思った瞬間、鰐の魔物に電気のようなものが全身に走り、身動きがピタリと止まった。


「キュ!」


 どうやら鰐の魔物の身動きが止まってしまった理由は後方で控えていたフェニのお陰であり、得意な雷魔法で自身のことを援護してくれたようだ。


「よくやったフェニ!これで終わりだ!」


 そのため、コウはフェニのことを褒めながらそのまま痺れて動くことが出来ない鰐の魔物の項目掛けて全体重を掛けつつ落下し、再びサンクチュアリを振り下ろしていく。


 そのままサンクチュアリの刃が項部分に振り下ろされると、全体重を乗せて勢いよく振り下ろしたお陰で強固な鱗を切り裂きながら刃はずぶりと沈み込んでいく。


「ちっ...これ以上刃が進んでいかないなっ!」


「後は私に任せて下さい~!」


 しかし鰐の魔物の丈夫な筋肉がサンクチュアリの刃が進むことを拒んだせいか、項からある程度進んだ位置で刃が止まることとなってしまい、両手で柄の部分を握りながら力を込め、何とかして断ち切ることが出来ないか四苦八苦していると、今度はライラがこちらに向かって走ってくる。


 そして何をするのかと思うと、ライラは痺れてしまっている鰐の魔物の目の前に立ち、顎先を思いっきり真上に向かって蹴り上げた。


 するとライラが蹴り上げたお陰で鰐の魔物の頭が上方向に向かって跳ね上がったため、サンクチュアリの刃は無理矢理、肉を切り裂きながら進むこととなり、そのまま首が切り落とされるのであった...。



いつも見てくださってありがとうございます!


次回の更新予定日は多分9月24日になりますのでよろしくお願いします。



 

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