第604話
「剣が刺さってるけど...冒険者達の物か?」
「どうですかね〜?だとするならここに来た人達って〜...」
「あいつにやられたのかもな」
「見た感じそうなりますよね〜...」
とりあえずそんな鰐の魔物の背中へ突き刺さっている幾つかの剣を見るにコウ達は1つの仮説を立てた。
それは目の前に現れた鰐の魔物がここへ辿り着いた思われる慣れた冒険者達を全て食い殺してしまったのではないか?ということである。
もし冒険者達が無事なのであれば、目の前にいる鰐の魔物は倒されている筈なのだ。
まぁこの場から逃げ出した可能性もなくはないが、背中に刺さった幾つかの剣を見るにきっと懸命に戦った証なのかもしれない。
「どうしますか〜?」
「まぁ今回は調査だけの予定だったし帰るか。冒険者達もやられてるだろうし」
「了解です〜...ってさっき入って来た入り口が無いんですけど〜...」
「んな馬鹿な...って無いな...」
とりあえず目の前にいる鰐の魔物の情報は何も得ておらず、今回は調査だけということもあって危険を犯す必要がないと判断したコウはここから撤退を選択したのだが、最初に後ろを振り向いたライラから入って来た入り口が無くなっているという声が聞こえてきた。
そのため、コウもまさかと思いながら後ろを振り返ると、最初にあった筈の入り口がいつの間にか人1人も通れないような隙間へ変化しているではないか。
「どういうことだ...?もしかして他の冒険者もこれで帰れなくなったのか?」
「そうかもですね〜もう諦めて戦いますか〜?」
「まぁそうするしかないよな...とりあえず慎重に行くぞ」
「了解です〜」
「キュ!」
ということで、目の前で待ち構えている鰐の魔物から逃げるのを諦め、戦う覚悟を決めてコウ達は意識を切り替えていく。
すると鰐の魔物もコウ達がやる気なことに察したのか明確的な殺意がこちらに向けてきたため、緊張感も相まってか愛用している武器であるサンクチュアリを握っている手のひらからじんわりと汗を掻いてしまう。
そんな緊張感が漂う空間で、まず口火を切ったのは目の前に鎮座していた鰐の魔物であり、痺れを切らしたのか咆哮しながらこちらに向かって突っ込んできた。
「来るから上手く避けろよ?」
「分かってますよ~!」
「キュイ!」
そのため、各々は息を合わせながら鰐の魔物の突進を左右に回避しつつ、すれ違いざまにコウは手に持っていたサンクチュアリの
「っ...硬いな!」
しかし横腹を守っている鱗は硬いためか、刃を滑らせると、岩を削るかのような感触が手に伝わり、ついサンクチュアリを手放してしまいそうになるが、再びギュッと固く握りしめながら滑らせていると、反対側から謎の衝撃が加わり、刃は無理やり突き刺さって表皮を切り裂き出した。
「ガァァァアアア!」
そしてコウの持つサンクチュアリで横腹の表皮を少し切り裂かれたことによって真っ赤な血が足元にある水を赤く染めていき、鰐の魔物は鳴き声を上げながら、のたうち回り出す。
それにしてもよくもまぁこんな硬い鱗が守るであろう背中に冒険者達は剣を突き刺せたものだとコウは手に持ってきたサンクチュアリを見ながら思ってしまう。
まぁ本人達も生きるか死ぬかの戦いだっただろうし、もしかすると火事場の馬鹿力でも出たのかもしれない。
「ひぃ〜...硬かったですね〜」
「何だライラも反撃したのか?」
「少し小突いてみたんですけど岩を殴ったみたいでした〜...」
「だから俺のサンクチュアリの刃が上手いこと突き刺さったのか」
どうやら先程の反対側から伝わってきた謎の衝撃の正体はライラが小突いたことによって起こったもののようで、手首をひらひらとさせながら痛そうにしていた。
そしてそんなことを話していると、のたうち回っていた鰐の魔物は痛みに慣れてきたのか、落ち着きを取り戻し始めたのだが、コウ達に一撃を喰らわされたのが原因で警戒心のレベルを一気に引き上げたらしく、ジリジリと後ろに下がり出す。
「それにしても警戒してるみたいだな」
「ゆっくり詰めていきますか~」
「キュ!」
そのため、コウ達もジリジリと様子を伺いながら距離を詰めていくと、急に足元にあった水が鰐の魔物に向かってまるで引き潮のように引いていき出すのであった...。
いつも見てくださってありがとうございます!
次回の更新予定日は多分9月22日になりますのでよろしくお願いします。
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