白いワンピースが揺れる記憶と静かに忍び寄る殺意が交差するホラーミステリ
- ★★★ Excellent!!!
本作はまずノスタルジックな風景の描写で読者を深く引き込みます。においまで伝わってくるような田舎町の描写がされて、この懐かしさがあるからこそ、やがて明かされる真実と狂気の落差が強烈になります。ノスタルジーと不穏さのコントラストを物語の核に据えた手腕は見事で、読後も白さと影が同時に残りました。
同時に、本作はサスペンスとしての緊迫感を非常に巧みに積み上げています。ラストシーン、両親の淡々とした語り口で次々と暴かれていく残虐な経緯、主人公の自己嫌悪と罪悪感の膨張、そして救いに見えたひなたの姿が一転して示す不気味な結末、これらが連鎖していく描写は、静かな恐怖を持続させました。派手な驚かしではなく、理性を削っていくようなじわじわとしたサスペンスが効いている点が、本格的なホラーミステリとしての力量を感じさせました。