九歳児-6/カナタノ
数ヶ月の時が経った。
教諭の自殺騒動も大分収まりを見せ。
夏休みに入った直後の頃だった。
「ねえ、今日暇だったりする?」
「……何、急に。」
唐突に鳴り響いた一本の電話。
その相手は、おおよそ予想はしていたけれど。
悠月からのものだった。
「宿題してたんだけど、どうにも気分が途切れちゃって。」
「それで僕に電話掛けてくるのもどうかと思うけど……。」
「別にいいでしょ?」
多分、何を言っても聞き流される。
溜息を吐いて、先を促した。
「……それで?」
「色々持って、来ない?」
それに。
頷く以外の返答は許されなかった。
◆
二度目の。
僕の自意識としては初めてちゃんと見る彼女の家。
それは、想像しているよりはこじんまりとした和風建築の家だった。
おっかなびっくり、玄関口を叩けば。
はぁい、という。
いつも聞いていた、あの声とともに戸が開かれた。
「遅かったね。」
「僕の家からの距離考えてくれると嬉しいんだけど。」
「
淳、僕の名前。
元々はもっと中性的な名前を考えられていたらしいのだけど。
結局こんな名前に落ち着いたのは、珍しく本家が主張した結果だったのだという。
曰く。
『もっと
僕としては、何方でも変わらない気がするのだけど。
案内されたのは、居間――ではなく、何故か彼女の部屋だった。
ふんわりとした、彼女の普段の匂いがして。
少しばかり、緊張を覚えた。
「じゃあ課題片付けちゃおうよ。」
……こんなことじゃいけない。
少しだけ考えを変えて。
僕がそう言って、課題を鞄から取り出そうとすれば。
「せっかく遊びに来たのにー?」
「あのね……。」
何処か面倒そうに、頬を膨らませた彼女の姿が炬燵机越しに見える。
家だからか、普段よりも少しだけラフで。
だから、というわけではないけど雰囲気も少しだけ違うように感じる。
「遊べると思ってゲームとか用意したのに。」
「後で苦労するのは悠月の方なんだけど……。」
「私はいいの。 見せてもらうから。」
誰に、というのを言外に含ませながらの彼女の言葉。
正直に言えば頬が少しばかり引きつったようにも感じる。
それを当てにしてるのか、このお姫様(仮)は。
「見せられるのは見せてもいいけどさぁ……。」
「何よ。」
「自分でやらなきゃいけないのがあるのは分かってる?」
自由研究とか、ポスターとか。
流石にこの辺は自分でどうにかしなきゃいけないのは。
流石に彼女も分かっていることだとは思うのだが。
「平気。 もう乾けば完成。」
「早いね!?」
それはそうよ、と彼女は笑った。
「私、計画立てるのだけは上手いのよ?」
実行できるかどうかは別問題なのかなぁ、とか。
最初から当てにされても困るんだけどなぁ、とか。
色々言いたかったけれど――――やめにした。
その笑みが見れただけで…………と。
そう思ってしまったから。
彼等の綴る怪奇譚 氷桜 @ice3136
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