第4話 7年後



背中に刺青を入れられた日から力は復讐を誓い"ある計画"を思いつき、それを実行する為に計画を進めていくのであった



まず父である将大に服従を誓い"ヤクザの息子"を演じた



力の計画は


今は将大の強い手駒となり嫡子である晃ではなく後継を自分にして貰い、ヤクザの親玉になった暁にはその手でヤクザを潰そうと考えていた



短絡的で稚拙な計画であったがそれに"助長するもの"が現れその稚拙な計画は綿密な計画へと改革されて行くのであった




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時は戻り現在



暴走していた韋駄天の単車達が蜘蛛の子を散らす様に散り散りとこの国道を去っていく


暴走は激化しパトカーの台数も増え、捕まる者も出て来た為、単車達は危機感を感じ散会して行った




「散ってったか〜 まあ今日はこんなもんでええやろ? "おぎ"」




その様を現在も歩道橋の上で見ていた力が隣に居る男にそう問いかける




「そうですね。今日はこんなもんでしょ。 この時世に暴走などしたら多いに"目立つ"でしょうからね。多少でも名は知れたでしょ」




そう力の隣にいる男はかつて力と喧嘩を繰り広げた"荻野"だったのだ




初めて喧嘩した日から力と萩野は何度も衝突していたが回数を重なる度に相手に対して憎しみを増幅させるのではなく互いに認め合って行くのであった




"喧嘩する程仲が良い"




という諺があるその言葉通り、2人はやがて仲良くなり"同じ境遇"である2人が唯一無二の存在になるのにさほど時間は掛からなかった



力と"同じ境遇"である荻野のも力と一緒で父親が偉大で母親は亡くなっていた



荻野の父親は有名な"政治家"で若い頃から類い稀なる掌握力で腕を鳴らし頭角を現して行ったが歳を重ねる度に汚職にまみれ



一度、その汚職が世に出てしまいバッシングを受けた事があった


荻野の父親は自分の持つ権力を際限に奮い火が完全に燃え盛る前に火消しをしたが時すでに遅く



荻野の母親は心を病み"自ら命を絶ってしまった"



責任感が強かった荻野の母親は世論ではなく夫の行いに罪を重く感じ自殺をしたのだ


母親という"責任"よりも妻である"責任"を重く背負い込んでしまったのだ



その事を幼い頃の荻野は頭で理解する事ができ"子ども"より"旦那"を取った母親を恨みはしたが、母親の死の原因を招いた張本人である父親に怒りの矛先を向ける



荻野も"政治の息子"を演じ父親を慕う様に政治家を目指すと口では発するが



心の中はでは憎悪を抱き復讐を誓ったのだった




荻野は幼い頃から英才教育を受け、政治家の道も約束されエリート街道まっしぐらであった


何かあった時のために勉学だけではなく護身術も習わされ主に合気道や柔術を身につけて行ったが正直、護身術の稽古について必要なのかと疑問に思っていたが力と"出会った事"により学ぶに値する事を知った




だがやはり萩野は"武器"は体を使うよりも頭を使う事だった


幼い頃から英才教育により地頭を鍛えられたのと生まれもった知能の高さで他の政治家の大人達も一目を置くほどの秀才だった



それに対し鼻を高くする荻野の父親であったがまさかその息子が寝首をかこうと絵を描いてるとは思いもしなかった




そして力の計画を知った荻野は自分が思い描いていた計画と表裏一体だと事に気付き力に賛同した事により



この瞬間"力と知恵"が互いに手を結んだのである




「"韋駄天"の旗揚げをし暴走を何度も成功させて事によって親父さんからの評価はだいぶ高まって来てるでしょうね。 どうですか?親父さんからの期待値は」




暴走も終わり警察とギャラリーもいなくなり急に閑散とし歩道橋の上で荻野が力にそう問いかける



現在の荻野は昔ほどの力との身長差はなく160前後まで伸びていた それでも17歳の男子の身長の平均から小さくはあるがだいぶ成長をしている


顔をはほとんど変わりなく成長しくりっとした丸い目で今でも可愛いらしい印象受けた






「そら"昔の酷い扱い"からしたら全然マシやけど やっぱそれでも兄貴と比べたらまだ跡取り奪える程やないなー 周りの組員なんか兄貴の金魚のフンかってぐらいゴマっすっとるわ」




力は手を横に振りながらまだまだやなとジェスチャーしながら問いに答える



荻野はスマホを操作し今回までの暴走の情報を網羅していた




「まあでも段々と世論に暴走の事を取り挙げられる様になった事ですしね。それにこれ見て下さい」




そう言われた力は荻野からスマホを受け取りスマホの画面を見つめる




「これは…」




荻野はSNSで今まで暴走の反響をエゴサしその反応を力に見せた




「え、これやばない? 良い感じに言うてくれる人ら結構おるやん」




SNSでの反響は

「今の時代にカッコいい」

「昔思い出すわー! もっとやれ若いもん!」

「見ててもおもろいww」

「あのマフラー音 最初はうるさいだけだと思っていたけどちゃんとしたリズムを奏でてるんだね」

「私も見に行ってみたい!」



等々と肯定的なコメントが多く


最初の頃は

「人間のクズ」

「あいつらうるさ過ぎて寝られへんww 」

「この時代に特攻服(笑)」

「捕まってて草w」



と否定的なコメントばかりであったが段々と"暴走"という行為に賛同する声が多く出て来たのであった




この暴走の様を荻野は動画に収めて動画投稿サイトに最初の暴走の頃から投稿している



その"動画"はもの珍しさからか再生回数が伸び続け反響が反響を生みあまりの反響で世論に取り上げられる程になっていた




「いい感じになってきたでしょ?」




そう言いながら力からスマホを受け取る


勿論これは荻野の計画である


"最終的"の計画を遂行するにはこの過程は必須で勿論、暴走族を作る様に力に仕向けたのも荻野である



この"韋駄天"の総長は力という事を知る人は数少ない

それは力は暴走に一度も"参加"をしていなく集会にも顔は出さない為にあまり知り渡っていない


だが力はこの事を父親には知らせている為、父親は韋駄天の総長は力だという事を知っていた



その為、暴走する度に力は父親からの"株"を上げそれに加え悪評が夏雲のように瞬く間に広がり動画の再生回数はみるみると増え広告収入で資金も蓄えていった




「お兄さんの件は仕方ないですね… そろそろ次の段階に進みますか…」




そう言った荻野の顔が急に冷酷なり目が据わる


その様子を見ていた力は一瞬肝を冷やしたが時刻も0時を過ぎた事によっての冷え込みだと思い「寒いし帰ろ」と荻野に伝え2人もこの場から去る



先程まで人で賑わっていたこの国道は人1人もいなく冷たく乾いた風切り音だけがこの国道に響いていた





力が「山王会」の後継を受け貰うのに最大の壁は兄である"晃"の存在である



晃は現在22歳になり跡取りになる為に将大の右腕として"稼業"に勤しんでいる




幼い頃から体格に恵まれた晃は家でも外でも周囲の人間から期待され自然と人が集まった


父である将大に容姿はそっくりで成長した事により体格もより一層大きくなりまさに将大の生き写しだ



"ヤクザ"の嫡子で恵まれた体格という事で嫌でも悪目立ちをして数々の強者から絡まれてきたがそれを自分の力だけで制してきた


その腕っぷしの強さとカリスマ性で数々の武勇伝を生み出した




1つ例を挙げると


現在では"ヤクザ"よりも"半グレ"の集団が肩を大きく切って歩く夜の街は少なくはない


ヤクザよりもよっぽど半グレ集団はタチが悪く


"詐欺、薬、強姦"等々なんでも有りだ

そんな"筋"を違えた集団が山王会の総本部がある街にも出現した事があった


その際に将大は




「まあ何やこっちにちょっかい出してくるんやったらお灸を据えたったええやろ それまでは好きにさしたれや」




という様子を見る方針であったがその方針に納得いかなかった晃は自分の街を荒らさせる事が許せず、"組"を使ってではなく"独自"で動き半グレ達を制圧した事があった



その時は晃はまだ学生であったが晃は一人で行動し始め半グレ集団を見つけては片っ端からぶっ飛ばして行った

そんな晃の"カリスマ性"に惹かれていく者が多く、次第に人が集まり共闘していった


数が多く平気に刃物や道具等を振り回す半グレ集団との抗争は熾烈を極めたが晃の圧倒的な"暴力"の前には半グレ達は襟首を掴まれた子供の様に他愛もなかった




そんな晃が高校を卒業し満を辞して、鳴り物入りでヤクザの"門戸"を開いたのだった






そんな晃が正真正銘の"ヤクザ"になり、はや5年




現在のヤクザの稼業では"腕っぷし"の強さだけでは通用しない世界だった


確かに"暴力"の力は偉大だがそれだけで稼業は成立しなく"お金"をどうしても作り出せなくては現在の"ヤクザ"では出世する事は出来ない



嫡子である晃には出世などする必要がないが将大はいつか代を譲った時に自ら"しのぎ"を生み出せるように晃にも金を作るように命令を下した



晃はとりあえず色々なしのぎに手を出し施行したが中々、思い描えた通りにならず利益を上げる事が出来ないでいた


いくら考えても決定的な知識のない晃には"その解決"がつく筈がなく、行き詰まった晃は将大に助言を請いた




「利益をまず考えるよりも自分の"得意"な事に目を向けて見ろ。好きな事を全力でやれ"金"は後から必然と付いてくる」




と助言を受けた晃は全身に稲妻が打たれたような衝撃が走り頭の中でバラバラだったパズルのピースが次々と嵌っていく様な感覚に陥った


その助言で自分を顧み、自分の武器はやはり昔から鍛え上げて来た"暴力"だと実感した晃はそこに紐付く、しのぎを思い付き見事に成功させたのだった





"ワァーー"

"ワァーー"



とある館内に人の感情の波が唸る



ここはどこにもある学校の体育館程の広さの館内で全体的に薄暗いが中央部だけは照明で照らされている


その中央部には四方を囲む様に作られてある格闘技なので使用されるリングがありその中に二人の男が対峙している


その男達の一挙一動に注目するリングの外から応援する観客の熱気が館内に充満していた




「今日も盛り上がってますねー!! 流石がは"若"です!!」




館内の様子を唯一、一望出来る館内2階のとある一室に"晃"が居てその隣に「山王会」の組員が数人同室しておりその中の一人の組員が晃にごまをする様に晃を持ち上げていた




「まだまだこれからやで ぱっとせん奴ばっかで"拳王"の看板になれそうな奴がおらんわ」




ここで行われているのは地下格闘技団体「拳王」の試合だ

 


幼い頃からの鍛錬で格闘技の技術をほとんど網羅している晃はその専門的な"知識"で地下格闘技団体「拳王」を自ら発足した



地下格闘技と普通の格闘技との違いは"グローブを装着"するという一点だけは同じだがそれ以外は異なり地下格闘技にはほぼほぼ"ルールが無い"頭突き、肘打ち、金的、等々何でもありだ


その刺激的さにファン達は魅力され観客は増え、名を挙げたい血の気の多いアウトロー達はこぞって参加し団体は大きく成長し試合が開催される度に館内は観客で埋め尽くされる程多いに盛り上がりを見せた





その地下格闘技の中でも1番盛り上げを見せるイベントがある



それは"騎馬戦"だ

普通の格闘技は従来通りであれば"一対一"のタイマンだがこのイベントは違う"四対四"で戦うのだ


1つのリングの中に8人が集まり初めて見るものは乱闘でも始まるかと勘違いするが、流石に乱闘とは違い四人が徒党を組み、"騎馬"の形を作る


学生の時に誰もが運動会で行った事があるであろう"騎馬戦"と全く同じだ



だが帽子を奪い合うという生温いものではなく上に乗る"騎手"同士で殴り合い、土台を作る"騎馬"は頭突きや蹴りで応戦する


ルールは至って簡単、騎手が地面に落ちたら負け、ただそれだけだ



ルールだけを聞けば凄くシンプルに思うが実際は熾烈を極めた


上に乗る騎手は自分自身の"足"で行動出来る訳ではない為、動きが制限される状況下で拳の応酬が繰り広げられる為に拳を避けるのが普段よりも難しく被弾覚悟での殴り合い


下の騎馬は逆に騎手を落とさない様に支えている為に"腕"が制限され足蹴りをするか頭突きで相手の騎馬を崩し崩されそうになる



そんな"根性"と"意地"のぶつかり合いの騎馬戦という競技の血生臭さに最初は唖然とする観客が多かったが今でもはこのイベントが行われる日のチケットは販売とほぼ同時に完売する程の人気ぶりだった





元々は晃の思い付きでやりだした騎馬戦で自らも出場していたが流石に晃が成す騎馬は強すぎて相手になる者はいなく"殿堂入り"という形で運営から間接的に出場拒否を言い渡たされた




「あれは騎馬やなくてもはや"戦車"やで」




と当時に観戦していた観客が苦笑いを浮かべながら話す程だった



現在、殿堂入りをしているが全く出場しないという訳ではなく"年に一回"年末の最後の祭典として騎馬戦トーナメントが行われる


そのトーナメントを勝ち続けた暁には晃に挑戦する権利が得られる



この「拳王」が発足され3年目になるがまだ誰も晃が成す騎馬に白星を挙げた者はいない


もれなく挑戦した者の中には"病院送り"にされる者は少なくなく最近ではトーナメントで優勝しても挑戦はしないが方が懸命な判断では?と風潮されつつあった



そんな騎馬戦トーナメントの応募の期日が迫っており晃は応募リストを手に取りそれに目を通す




「は…?」




晃が持つ応募リストには応募した"チーム名"と四人の"参加者の名前"が全て記載されてある。その中に"チーム名は"韋駄天"でその参加者の中に"大山 力"の名前を発見し思わず、おはじきを弾くかの様に晃は声を漏した





「よし、そろそろやで"お前ら"準備いけんか?」




地下格闘技「拳王」の最大のイベント"騎馬戦トーナメント"の当日、"力たち"は出場者用に用意された試合会場とは別にある控え室のとある一室にいた




「とりあえず、"河内"が先頭でええんやろ?おぎ」




力以外におぎ(("荻野"だが力は"おぎ"と呼んでいる為に以後、おぎにします))と背中に「韋駄天」とでかでかと目立つ白い特攻服を着た男が三人いる



その三人の中でも河内亮かわち りょうという人物が一際、存在感を放っていた


上背は170前後と普通だが尋常ではないのが上背ではなく横幅だ体重は優に100kgを軽く超えていてまさに"相撲取り"かのような肥えた身体だった




「とりあえず"お兄さん"と戦うまで力は体力温存しときましょう。それまでは河内さんの膂力で騎馬ごと吹っ飛ばして貰いましょう」




おぎは作戦の概要を伝え河内に「頼みましたよ」と言いつつ河内の肩にポンと手を置いた



おぎのその期待に応えるように河内は肉付きのある顔を縦に振る


二重顎で脂肪により圧迫された瞼はあまり開かなく糸目であったがその微かに見える眼光からは何か強い意志が感じられた




「さあ行くで!! いっちょ暴れたろや」




と力は河内達を鼓舞しつつグレーのパーカーを脱ぎおぎに預け力は特攻服ではなくTシャツとジャージ姿になり河内達を率いて控え室を後にして行った





"通常"の騎馬戦の試合では1チーム毎、つまり四対四のタイマンで行われたていたが"今回"は違った



今回の騎馬戦トーナメントでは年末の祭典という事もあり盛り上がり方が違う



このトーナメントの優勝者達には"晃"に挑戦する権利を得られるだけではなく"賞金"が用意されている


その賞金の金額は何と"50万"


地下格闘技の賞金の相場からするとこれは破格な数字だった


通常の試合では良くて10万貰えれば御の字なのだが何とその金額の"5倍"だ

更にこの50万の賞金を"担保"に晃に挑戦する事が出来、勝利した暁には"10倍"の"500万"というとんでもない数字の賞金を獲得出来る


だが負けた時には"担保"にしていた賞金は没収される為、ハイリスクハイリターンである




「喧嘩に勝つだけで500万貰える」




そんな単純でわかりやすい夢のあるイベントに全国から腕をならす猛者達が集まり参加人数をとてつもない数になっていた



まず書類選考で人数を絞ったがそれでも一日で消化出来る程の参加人数ではなく晃は頭を抱えたがとあるアイデアを思い付く












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