ポニーテール

「こっち座って。」

今度はなんだ?僕は指示された通りに姿見に前に置かれた椅子に座った。

「はいっ!じゃあこれからナツキには可愛いヘアスタイルいっぱい教えちゃいま~す。」

「は?」

え?おいおいおいおい待てよ。僕は女子じゃないんだ。しかし、有村はお構いなしに僕の髪に触れてきた。僕は反射的に有村の手をはらってしまった。

「あ!」

「ごめんなさい。ごめんなさい。お願いします。教えてください。」

「まずはポニーテールからよ。」

「はい...。」

有村は手際よく僕の髪をブラッシングしていった。

「ナツキってホントに髪キレイだよね。」

「教えるから、よぉく見ててね。」

でも、僕は姿見を見れなかった。女子へと近づいていく僕を....。

「ポニーテールは耳の高さで結ぶと可愛いのよ。だから、まずこうやってハーフアップを作ってから」

そういって有村は僕の耳上の髪を優しくつかみ後ろに持ってきブラシで時ゴムで留めた。

「そして、下のほうの髪を持って行って.....一緒に結んでハーフアップの時のヘアゴムを取りま~す♡」

「あっ、そうそう大事なこと忘れてた。ここの髪を...っと。」

有村は僕の耳元で何かをしたが僕は何をされたかも知りたくなかった。

「はい!完成♡ナツキ!なんで目つぶってんの。ほら開けなさい。」

恐る恐る目を開けると綺麗に結ばれたポニーテールをした僕がいた。おまけに前髪のサイドに.......

触覚がある。もう女子にしか見えない。うぅぅ、涙が出そうだ。

「ナツキどうしたの?」

「何でもない.....。」

そういって頭を振ると結んだ髪が首元に触れ。ポニーテールをしていると嫌でも実感した。

「可愛いじゃん。ちゃんと家で練習してきてね。」

「はい。」



家に帰ると母が話しかけてきた。

「ナツキちゃん、可愛いじゃないその制服。」

あぁ、そうだ僕は有村に渡された制服を着たまま帰ってきてしまったのだ。帰り道誰かに見られてないかな。でも、変には見えないんだろうけど......。そして、そのあと僕は何度も何度も髪を結んではほどいて結んではほどいてポニーテールを練習した。

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