38th Memory Vol.3(中国/成都/8/2020)まで読んでのレビューです。
本当はもう少し読み進んでから書こうと思っていたのですが、カクヨムコン期間ということで、応援の意味もこめて書きます。
「異本」というオリジナリティあふれる設定ですが、この設定の作りこみがすばらしいと思いました。作者様の膨大な知識量と、この物語を現実としてみせるための努力がありありと感じられます。
作りこまれた設定のおかげで、まるで現実にできていることかのように、この物語の空気感や世界観にどっぷりとつかることができます。
風景の描写や、登場人物の会話がどことなく洒落ているのも魅力のひとつ。
ものを書く人間として、見習いたいなあ、と思う表現のオンパレードです。
長い長い物語ではありますが、少しずつ楽しみに拝読しています。
カクヨムの作品の中でも、お気に入りの物語のひとつです。
『異本』と呼ばれる特別な本を集める物語。
現代世界が舞台ながら、その空気感はまるでファンタジーの様です。
こちらの作品は第6回カクヨムWeb小説コンテストの中間選考を通っていたり、
ノベリズム大賞では選考を通った上に主催側から言及を頂いているほど優れた作品です。
内容も実に美しく、キャラクター同士の掛け合いから始まるのが印象的でした。
話が進むにつれ世界観や目的が分かっていくという構成が実に素晴らしく、それだけで世界観にどっぷりと浸れます。
また本に関する知識も豊富で初版に関する出来事が話のキーになっていたり、フィクションながらベルリン崩壊といった実際の国の歴史や文化も作中に登場するなど、現実世界の出来事にも造形が深く描きたいものがしっかりと伝わる内容です。
シンプルかつ洗練されたタイトル、そして本を開けば仕掛け絵本のように溢れる魅力の数々。
是非貴方も一読してみては如何でしょうか。
私も陰ながら応援しております。
もっと早くにレビューを書くつもりでした。
ついつい物語を、じっっっくり味わおうとしていたら、もう月替わりに……m(__)m
子どものころ、学校の図書館が大好きでした。
背表紙が、ぎっしり詰まっている棚。
そこには魔法と夢が、スリルとロマンスが溢れんばかりに満ちていた。眺めるだけで幸せな気持ちになります。
本の価値って、なんでしょう?
知識。思想。文化。
見たことのないもの。行ったこともない場所。会ったことがないひと。
本には、あらゆるものが、収められている。
棚に並ぶ、それらを、手に入れることは、たまらない楽しみです。
まして、それが特別な力を持った『異本』なら?
世界中を旅する情景は生き生きとしており、謎めいて魅力に溢れた登場人物たちが本を巡って闘う。時に助け合い、力を知るからこそ、それを制御しようとする。
つぎに出てくる本は、誰が、どんなふうに使うのだろう?
そうです。
この作品の『異本』は、“読む”だけではないのです。
なんなら国を亡ぼすことも出来る。
人を殺めるなんて、簡単なこと。
どうやら物語は、とても長いらしい。
私が読めているのは、まだまだ序盤。
でも、作者さまには申し訳ないのですが、私には、この作品はゆっくりじっくり丹念に読み進めていきたい、あたりめのような(ここ半年のブームなんです)物語なのです。
なんだかレビューっぽくない文章で、お羞ずかしい。
でも、カクヨムで、こういった、流行を超越した作品に出逢えたことは、嬉しいかぎりです。
たとえばエンデのファンタジーのように、絹張りの装丁で出版されたら、たぶんわたくし鼻から出血します。
40th Memory Vol.30(地下世界/シャンバラ/??/????)まで読了。
最も驚かされたのは、テキストの確かさです。
添削的な視点では突っ込みどころが見当たらないほど、過不足のないスマートな文体でビックリしました。
作家を目指すような人は、このくらいの文章を書かねばならんのだなぁ、と勉強になります。
それでいて、自分の技量をひけらかすようなクドさもない。
文章が上手くても、ダラダラと自分のテキストに酔ってしまう書き手も、アマチュアには少なくないですからね。
それと、設定の見事さにもうなります。
長編作に相応しい、素地を備えた物語設定ですよね。
このアイディアなら、どんな展開でも持っていけそう、というワクワクを内包していますね。
なかなか無いですよ、ここまでのものは。
僕が読んだところまでは、まだちょっと着地点は見えない感じですが、
このくらいの技量のある作家さんなら、エタることなく締めを迎えられるんじゃないか? という確信を覚えます。
続きも頑張ってください。
どうしてか酒とタバコとアンティークな香りがするダークな奇譚。
何処までも灰色と白色で象られた世界に赤いドレスを着た少女の姿が躍動的に映えるような錯覚を起こす一本。
周りの世界は静かなのに主人公と少女だけがシニカルな会話を繰り広げながら、『異本』という奇々怪々なアーティファクとがちらつく。
776冊の異本。
シェヘラザード。
箱庭。
ミステリアスで独特な設定と生き生きとした常識はずれな彼らに読んだ貴方は思わず釘付けになるでしょう。
『異本』というアイテムを蒐集するという明確な目的で物語は進むのに、そこにまつわる不可思議の数々。作者の権謀術数と作品の色気に嵌れば後は脳みそが浸かっている。
一度読めばあなたもこのオシャレと可愛い少女を愛さずにはいられない。
抜け出せない猛毒のような一冊を貴方に。