シニカルなジャズを読むよう、或いは前後不覚に陥るよう


どうしてか酒とタバコとアンティークな香りがするダークな奇譚。

何処までも灰色と白色で象られた世界に赤いドレスを着た少女の姿が躍動的に映えるような錯覚を起こす一本。

周りの世界は静かなのに主人公と少女だけがシニカルな会話を繰り広げながら、『異本』という奇々怪々なアーティファクとがちらつく。

776冊の異本。
シェヘラザード。
箱庭。

ミステリアスで独特な設定と生き生きとした常識はずれな彼らに読んだ貴方は思わず釘付けになるでしょう。

『異本』というアイテムを蒐集するという明確な目的で物語は進むのに、そこにまつわる不可思議の数々。作者の権謀術数と作品の色気に嵌れば後は脳みそが浸かっている。

一度読めばあなたもこのオシャレと可愛い少女を愛さずにはいられない。



抜け出せない猛毒のような一冊を貴方に。


レビュワー

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箱庭物語