イケメン美女な幼馴染と両想いになりたい人生でした
雨音恵
序章
第1話:幼馴染はとにかくデカイ
俺―――
「虚構の世界で幼馴染を虐げるなら……せめて現実では……幼馴染の
これは、いつも爽やかでカッコイイ、男よりもイケメン美人な幼馴染と
「その話……詳しく聞かせてもらおうか!」
ばたんと扉を開けて容赦なく入ってくるモデル体型の幼馴染の美女。
「弥生!? なんで勝手に入ってくるんだよ!? というかなんでいつもいつもお前は週末になると俺の家に来るんだ!?」
彼女の名は
少し吊り上がった目尻は鋭い印象と慈愛の印象という相反する属性を兼ね備えたハイブリットタイプ。肩口で切りそろえられた清潔感のある髪型、秀麗眉目な凛とした容姿と爽やか佇まいから男よりも女性人気が高いイケメン美女。加えて女性らしい双丘も兼ね備えているまさに完璧超人。
そんな誰もが認めるこの美女と俺は家が隣同士ということもあってずっと一緒に過ごしてきた。それは高校生の今となっても変わっていない。
「フフフ……何を言っているんだ、純平。私とお前の……仲じゃないか」
「だぁ―――!? 引っ付くな! 抱き枕扱いするな! 俺だって立派な男なんだぞ!?
「いいじゃないか。昔はいつもこうして抱きしめていて喜んでいたじゃないか。それに……こうしていると暖かくないか?」
ふぅと耳に優しく息を吹きかけてくる幼馴染。ぞくりと俺の背中に電流が走る。そしてこれ見よがしに、この女は己の最大の武器である天然物の発育のいい双乳が思い切り押し付けくる。
「純平……どうしたんだ? まさか私に後ろから抱きしめられて……嬉しいのか? それとも、こ・う・ふ・ん、しているのか?」
「や、弥生…………お前ぇ……」
「私としては、嬉しんだぞ? 唐変木、朴念仁、素直になれないツンツン幼馴染がようやく私にデレを見せてくれたんだからな……はむっ」
「ひゃっ―――!?」
こともあろうに弥生は俺の耳たぶをあまがみしてきた。突然の出来事に俺は思わず悲鳴に近い声をあげてしまう。それがまたこいつの情動にスイッチをいれることになるとは知らず。
「ハハッ! なんて可愛らしい声を上げるんだ。そんな声を出さないでくれよ、純平。もっと……聞きたくなるじゃないか」
弥生の俺を抱きしめる腕の力は強くなり。容赦なく、しかし優しく甘く、俺の耳朶を何度も何度も慈しむように時折舌で耳裏をペロリとして甘噛みしてくる。ついでに胸も押し付けてくる。その感触は極上のクッションのように柔らかだ。振り返り、そこに顔をうずめたくなる。
スキンシップが過剰なことはままあったが、ここまでされることは今までなかった。ただこの至福ともいえる時間に俺の頭はどうになってしまいそうで。
「どうしたんだ、純平。珍しく……はむ……抵抗しないじゃないか。はむっ……ちゅっ……ならこのまま……押し倒しても……き・せ・い・じ・じ・つ。作ってもいいのかな?」
脳髄に突き刺さる、甘い誘惑。俺の本能はそれに従えと、素直になって受け入れろと悪魔のように囁くが。俺の理性が全力で止めにかかる。抗えと。ちゃんと思いを伝えてからじゃないといけないと。流れに身を任せてはだめだと訴える。俺の選択は―――
「お、お前! いい加減にしろ! なんなんだよいきなり! びっくりを通り越して怖いわ!? なに!? 発情期!? 嬉しいけどこういうことは順序ってもんがあるだろう!?」
勝った。理性が勝った。なんとか弥生の
「ッチ。残念。もう我を取り戻したか。あと一押しで行けると思ったのに……理性が邪魔したか。許せない……」
「いや……弥生さん? 本当に、どうされたんですか? いつものクールとか凛々しさとか、どこに置き忘れてきたんでしょうか? 自宅ですか? 自宅なら隣なんで今すぐ取りに帰ってもらっていいですか?」
「フフフ。ひどいことを言うな、純平。私は常日頃からお前と隙あらばイチャイチャしたいと思っていたんだぞ? それなのに君がツンケンするから……」
あれれ、この美女顔を赤くしながら急にモジモジし出したぞ、おかしいなぁ。なんて小学生探偵がすっとぼけるようなことを頭の中で考えながら彼女を見ていると、弥生は大きく一歩踏み出して俺との距離を詰めてきた。この狭い部屋の中で逃げ場もうない。簡単に壁に追い詰められた。
「純平……お前、叫んでいたよな。私を甘やかすって。私の聞き間違いじゃないよな?」
いつもの凛々しい顔ではなく、とても可愛らしい、それでいてどこか切なげな表情で胸に手を当てながら弥生は尋ねてきた。
「なぁ……どうなんだ? 本当に、純平は私みたいな男女を……女として甘やかしてくれるのか?」
「あぁ、いや……その……俺が叫んだのは……その……」
言えない。Web小説に蔓延る
「なぁ……どうなんだ、純平。お前は私を、女として見てくれているのか? もしそうなら私はお前と……一緒に―――」
さらに一歩。距離を詰めてくる弥生。俺は最後の抵抗として彼女の瞳に視線を合わせる。そうだ、今だ。今ここで言うのだ。長年溜めてきた弥生への思いを―――
「弥生……俺は……お前のことがずっと―――」
「―――一緒に私と、幼馴染がイチャイチャする小説を書くのを手伝ってくれないだろうか!?」
俺の時が
そもそもどうしてこんなことになったのか。
時間を少し巻き戻してみよう。と言っても一時間程度だが。
それにしても、俺の一世一代の告白のタイミングをぶち壊さないで欲しかった。
俺は盛大にため息をついた。
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