異世界転生をテーマとした作品というのは、前世の知識或いは転移の際に所謂『神』のような存在から与えられたチート能力によって、例えば勇者として次々と武勲を立てその結果多くの異性から持て囃されるなどといった、現実世界で味わえなかったこの世の春を謳歌する…そのようなイメージがあった。あくまで自分の狭い見識による偏ったものではあるが。
だが、この作品は上記のようなことが一切なく、異世界に転移したところで結局はそれが新たな現実となるだけで、結局そこでの幸福も自分の意思で行動することで掴むしかないのだ…ということを思わせてくれ、他のあらゆる異世界転生作品へのアンチテーゼであると感じられ、とても好感が持てている。
どんな世界に、どんな場所に生きていようと、結局のところ人生とはまさに選択の連続である…同じように感じている人にこそ、是非読んでいただきたい作品だと思う。
友人である八白さんの小説作品
八白さんと言えばこれまで狂気の十二年継続妄想日記「うにゅほとの生活」しか知らなかったのだが、本人に頼まれて読んだらとんでもない小説だった
第一章で既にかなり面白く、第二章も安定していたのだが、第三章で急に面白さのレベルが跳ね上がる
第四章に入って「さすがにあの第三章ほどではないだろう」と読み進めていくと余裕でハードルを飛び越え、第五章を「さすがにあの第四章ほどではないよな」と警戒していたらさらに面白く、それが第一部のラストである第七章まで続いていく
自分は本人からデータをいただいて先に読んでしまったが、一気読みは一気読みでもったいなかったかもしれない
毎日更新を待ち、長く楽しむのも読み方のひとつだろう
是非、面白さのレベルが一段上がる第三章まで読んでみてほしい
それより上の読書体験が、必ず待っている
……あの時、ああしていれば今とは違った展開があったかもしれない。
誰しもそんな苦い過去の一つや二つはあるだろう。私も六十個ぐらいある。
では果たしてこの物語は。そんな失敗をことごとくかわし、成功だけを積み重ね栄光へと至るものなのだろうか?
否である。この物語のタイトルを今一度読み返してほしい。
『異世界は選択の連続である ~自称村人A、押し付けられた選択肢に抗いヒーローを目指す~』
そう、これは選択に抗う物語なのだ。
何をもって成功とするか。それには人それぞれの基準があり、だからこそ時に選択と成功は、親しい誰かに失敗や不幸をもたらすかもしれない。
だから成功とは、ひどくあやふやなものの上に成り立っているのだ。
だったらそれらもひっくるめて解決できる、すべてに成功した物語を書けばいい?
ならば、その物語は四文字で完結してしまうだろう。
『成功した』
だから、この物語は。何もかもが成功するものとはならない。
……村人Aという波風を立てない生き方を望む主人公、相葉奏刀からすれば、最善の選択肢を選べるというのはまさに理想の如き能力だ。
楽に生きられるという意味では。
それでも彼はいつしかその選択肢に、安易な成功に抗うことを選ぶのだ。
かけがえのないものを守るヒーローとなる為に、悩み苦しむとしても立ち向かうのだ。
どうか、彼の生きざまを見届けてほしい。
現時点において、第四章までが完結している。そのいずれもがライトノベル一冊分のボリュームを持っているが、八白 嘘氏のシャープな文体はそれらの文章をあっという間に消化させてしまうほど読みやすく、物語へと深く没入させてくれるだろう。
そのどれもが魅力的であるが、あえてオススメするならば第一章と第三章を挙げたい。
第一章は導入ということもあって、異世界に出会うヒロインの可愛らしさやいじらしさ、奏刀が得た選択肢という能力を活かした展開がふんだんに描かれており、彼女らの魅力と、選択肢という能力の魅せ方に目を引かれるだろう。
そしてクライマックスには、これらの総決算とでもいうべき怒涛の展開が待ち構えている。
また一章はある意味これ単独で作品として完成されているということもあり、まずは一章をまるごと読んでいただきたいものである。
そしてこの一章を読み終え作品を気に入っていただけた方には、次は三章まで読んでいただきたいと思う。
選択肢というものをよく理解し、世界観にも慣れ親しんだうえで迎える第三章であるが、ここには一つの山場が待ち構えている。
そこを初めて読んだ私の感想は恐ろしいというものだった。
強大であり、困難な障害だろうとも思う。だがしかし何より強く感じた感情は恐怖だった。
先だって八白 嘘氏の文体はシャープであると評したが、その優れた文体がここにきてこの存在への恐ろしさを際立たせ、読者へと襲い掛かってくるのだ。
人間は未知のものに恐怖するというが、まさにこの章に出てくる存在はそれを象徴するかのようなモノである。
得体が知れず、理解が及ばず。それ故におぞましい。
是非とも読んでいただきたい。そして私の感じた恐怖をあなたも味わってほしい。
きっと想像よりも大きい恐怖と、それを乗り越えた時の爽快感を感じることが出来るだろう。
「うにゅほとの生活を書き連ねた日記」の作者として一部界隈で有名な八白嘘さんの本格ファンタジー小説。
異世界転移、ダンジョンに潜る冒険者、悪党からの襲撃、奴隷、バトルトーナメント──なろう系のテンプレートをあえて取り入れながらも、そのすべてを極上の物語に昇華する手腕は圧巻。
私自身、なろうテンプレを馬鹿にしていたため、同じ材料でも調理次第で素晴らしくもなるのだと、思わずハッとさせられた。
個人的に好きなのは、三章四話:最上拝謁の間に登場した、震えるほど禍々しく、目を背けたくなるほど不気味な敵である。
ネタバレは避けるが、よくこんな緊張感を文章のみで描写できるものだと感心してしまった。
一章も二章も面白いが、三章で面白さがグンと跳ね上がる。
このレビューを見て「面白そうだ」と感じた方は、三章まで読んでみてほしい。
レビュー時点で四章が開始されたところなので、こちらも楽しみだ。
「色分けされた選択肢によって未来が断片的にわかる」というチート能力を手に入れた主人公が、さまざまな敵をらくらく倒し無双する――とはならないのが本作の最大の魅力
脳死で良い選択肢を選び続けるのなら、機械でいい
与えられた選択肢に抗い、時に利用し、自分の力で未来を掴み取る主人公が、最高にカッコいいのだ
世界観もよく練りこまれており、よくナーロッパなどと揶揄されるドラクエ的世界観とは一線を画している
その代わり、頭を空っぽにして読むには適さず、面白いぶんだけ読めば疲れる点は注意しておきたい
とにかく第一章のパラキストリ連邦編だけ読んでみよう
鳥肌立つから