城戸光政考

雅島貢@107kg

第1話

 城戸光政は全員大丈夫な前提で行きたいが、ジャンプで聖闘士星矢やってたのは1986年から1990年だということで、じゃあ流石にその前提で行くの無理あんな。とは言え、聖闘士星矢の重大な……重大か……? 分からない。まあでもその、ネタバレがあるので、聖闘士星矢のネタバレを今考慮する必要があんのかはともかく、まだ読んだことなかったら、とりあえず文庫版が出てるんで買って読みましょう。今どうせ皆さん引きこもってて暇でしょう。ジャンプコミックス版はBOOK☆WALKERにもありますよ! KADOKAWAが!! 運営している!! BOOK☆WALKERにもー!!!!!!




 はい。読んだ、または読んでないがまあ別に一生読まないからいいや、という前提で書きますが、城戸光政というのは聖闘士星矢主要人物の父親である。もうちょい具体的に言うと、明らかになっているところで言うとペガサス星矢・ドラゴン紫龍・キグナス氷河・フェニックス一輝・アンドロメダ瞬・ユニコーン邪武・ライオネット蛮・ウルフ那智・ベアー檄・ヒドラ市の父親(あえて書いていない人物が一人いるが、後述する)である。あと90人の父親だが、90人の大半は死んでしまった……厳しい聖闘士の修行に耐えられずに……。辛い。

 なんでこんなことに? というと、話はシンプルで(シンプルかなあ)、まあその、聖域というところにアテナという……なんつうか、聖闘士を統べる神みたいなのが生まれた。ところが、教皇という、この聖域の管理者がいて、このアテナを殺そうとした。射手座のアイオロスはこの企てを察知し、アテナを救って聖域を出奔するが、追っ手の手にかかり、瀕死となったところをたまたま旅行に来ていたグラード財団という世界でも有数の財閥の長である城戸光政に会う。


 たまたま旅行に来ていた????? 以前から親交があったとかではなく??????????


 えー、たまたま旅行に来ていた城戸光政に会って、射手座の聖衣とアテナを託す。まあ多分聖闘士制度についても概略を話したのであろう。それを聞いた城戸光政は、「私には100人ちかい息子がいる……その息子をささげろということか……! 天は私になんという試練を与えたのだ!!」的なことを言って、100人の息子を各地の青銅聖闘士試験場みたいなところに送り込んで(そういう場所があります。残念ながら日本にはありません)、生きるか死ぬかの試練を乗り越えさせたのだ!!!! セインッセイヤーーーーーーー!(でれれれーれれでーれれでーれれーでれれでーれれれーーーーーー だーきしめたーーこーころのこすもー) なお9割は乗り越えられていない。


 この設定すごくないか? 「世界を救う」という使命があったとして(※事実上、アテナの降臨は世界の危機を意味している)、自前の子供100人をささげるって。そもそも100人いるのすごいし。なお100人と書いたが、これは男児だけをカウントしている。と思う。多分。どうだろ。ここはちょっと自信がない。女児は女児で別枠のカウントしていると思う。少なくとも送り込んだ子供は男の子で、だから実は200人くらい子供がいる可能性すらある。


 いやいや、そもそもそんな、都合よくギリシア旅行中の大富豪が逃げてきたアイオロスと出会うなんて都合が良いことが起きるのだから、もともと城戸光政自体が事前になんかギリシア神話的なスーパーパワーで、男しか生まれない加護を得ていて、出会うべくして出会っただけでは? デウス・エクス・マキナ的なあれで。と皆さんは安易に思うかもしれないが、それは実はまさに主人公が否定するんだよね。知ってますか。星華さん。そう、まさに聖闘士星矢のその人だ!!! ほら、娘も生まれちゃってる。

 聖闘士星矢って話の最初のマクガフィンがまさにこれなんですよ。星矢は「姉」に再会したいがために、聖闘士として生き延びてやろうと思っている。ということは姉がいる。いるのよ。これが。いちゃうんだよな~。ということは一定の確率で女児も生まれてんのよね。低確率なのかもしれんけどね。

 

 しかし、城戸光政はなぜ実子にこだわったのか? いやまあこだわりまさあな、そもそも100人作ってる人間だからな。ただその、この100人の息子は、物心ついたころは孤児院に集まっているのだが、物心ついたころというのは既に城戸光政はアテナに出会って"回心"しちゃっているので、それまでどういうところでどういう生活をしていたかはいまひとつわからない。キグナス氷河とか、マーマのなきがらに会いに行って鍛えられてた節もあるから、自由にそれぞれの家庭で暮らしていたパターンもあると思うんだよな。もしかしたらカキン王国みたいなことをやろうとしていたのかもしれないが……。いやでもそれだったら「なんて残酷な運命を!」みたいなことは言わないはずで、だからやっぱ、「それなりに不自由なく暮らしていた100人の子供を、泣く泣く孤児院に叩き込んで、ここで聖闘士についての常識を一斉に教育し、ある程度育ったら聖衣試験場みたいなところに叩きこんだ」ということになると思うんだ。(なお、聖闘士についての常識を一斉に教育したと思われるのは、「瞬がデスフェニックス島だかに送られそうになったとき、"へへっ、よりにもよってあのデスフェニックス島か……泣き虫瞬なら即死だぜ"みたいなことを言ってたシーンがあったと思うからです。教育を受けていないとこの台詞はでない) 


 こう言っちゃあなんだが、別に孤児を買ってもよかったじゃあないですか。爆裂に金があることは明らかなんだから。今ある程度育っちゃってるやつらを雇うというのがだめだとしても、実子にする必要はない。孤児の中でも本当に身寄りがなくて、明日食うメシもないみたいなやつ、何せ国籍に限定がないから(キグナス氷河の母はおそらくロシア人)、国外に視野を広げればいそうじゃあないですか? そういう子も。そしたら、自分の息子/娘たちはまあ幸せ、ほんで、よその、ほったらかしになってたら死んだかもしれない子供はとりあえず命は救われているから、マイナスからゼロにはなって、生き延びればそら光政は恨んだかもわからんが、生存はできているわけで。しかも聖闘士になれてるし。聖闘士になれてることをプラスとするかには議論が必要かもしれないが。


 それでもなお実子にこだわった、まず真っ先に実子を「ささげる」ことを思いついた、というのは、やっぱどっかにそういうロマンを求める血があったんでしょうかね。世界有数の財閥を作った。世界中で愛も育んできた(きょうだいが2組確認されているので、ワンナイトってわけでもなさそうですよね)。放浪に近い旅もしている。それでも充たされない心。そこに突然現れた「運命の出会い」。自分では世界を救うことはできないかもしれない。でも、自分の血が、拡散した種が世界を救うことなら、あるいは。そのロマンに抗えなかった。そういうことなのかもしれない。


「少年はみんな 明日の勇者」って、そういうことなんですかね。あれは城戸光政の歌だったか。なるほどな。


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