第34話 怪物

 暗闇で蠢く二体の獣。

 それは性欲に溢れた男女。

 「も・・・もう・・・」

 男はそう言い残すと絶命した。

 彼の上に跨る女は不敵な笑みを浮かべる。

 「私はまだイッて無いのに逝くなんて」

 そう言うと、亡骸となった男の上から降りる。

 「これで丁度・・・100人目か」

 彼女の身体には力が漲る。

 男の精を吸い上げれば吸い上げる程に彼女の力が漲る。

 「さて・・・この間の奴らが来たと言う事は・・・」

 討伐が本格的になる。

 それを察した女は下着も着けずに高校の制服を着て、ゴミが散乱する部屋から出た。


 周囲から異臭がするとして、管理人が入ったマンションの一室。

 ベッドの上には裸の男性の遺体。

 部屋中に散乱するゴミ。

 何が起きたか解らない。ただ言える事は男の死体は恍惚の笑みを浮かべていた事だけだった。

 事件はすぐに変死事件として刑事部に渡り、そして、零係へと移った。

 普通の殺人じゃない。鬼に精気を奪われた。

 ここには鬼が居たはずだった。

 部屋の主は殺害された男。

 周囲の聞き込みでは真面目な独身男性だったと。

 マンションの監視カメラにも彼しか映っていない。

 だが、零係は異変に気付く。彼が死亡する1週間前の映像には彼が一人でエントランスを移動する映像が残っていた。だが、明らかに彼は誰かをエスコートしているように思えた。だが、その誰かは映像に映っていない。

 こんな事があり得るとすれば、鬼の仕業だ。高等な鬼は自らの姿を見えなくすると言う。これもその一種で。この鬼はカメラに映らないのではないか?

 零係は一度、壊滅して、再結成された構成員は未熟な者ばかり、この事に気付いただけでも手柄であった。だが、この先、どうすべきか。彼らは困惑し、上司に相談するしかなかった。

 

 事態はすぐに姫騎士へと伝達される。それは真由にもだ。

 「相手はかなり高位の鬼・・・この間、倒した鬼以上に強敵かも」

 真由は真剣な表情で俊哉に告げる。

 「この間・・・あの姫騎士に憑いた鬼より」

 「あいつは姫騎士に憑いたから厄介だっただけ。今回の相手は本質的に脅威度が高い存在。術を操るわ」

 「術?」

 「そう。高位の鬼は陰陽師のように術を操ります。今回、確認されているのは姿を消す隠匿の術。これを使われると鬼を見る事が出来ません」

 「見る事がって・・・そんな事」

 「常識的ではありませんが、事実、監視カメラに鬼の姿は映っていません」

 「そんなの相手に・・・」

 「だけど・・・やらねば、人間は片っ端から殺されます」

 「マジかよ・・・」

 やる気を出していた俊哉だったが、話を聞いて萎えてしまう。

 「だけど、鬼は精気を食らわねば、消滅してしまいます。必ず、姿を現すでしょうから、そこを総力を挙げて、叩きます。場合によっては再び鈴丸にも協力を願います」

 鈴丸は人間に協力的な鬼である。だが、鬼には違いないので、現在はとある施設にて、保護と言う名の監禁がなされている。

 「姫騎士は・・・フィオナさん達は?」

 「彼女らもすでに回復しております。失った戦力も6割は戻ったとか。でも戦力の多くは新人で未熟だとも」

 「不安しかない」

 「でも私はあの戦い以降、更なる精進を致しました。前戯だけで、俊哉様もイカせられる程に・・・」

 「それ・・・まぁ・・・僕も頑張っていたけど」

 俊哉は恥ずかしそうにモジモジする。


 「さて・・・登校するかね」

 女の名前は新藤あずさ。

 都内の共学高校に通う女子高生。

 そして、その身に鬼を抱く者。

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僕の股間が聖剣でカワイイ姫騎士が抜いてくれた。 三八式物書機 @Mpochi

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