アケガタリ

安良巻祐介

 アケガタリと会うには、絵模様を入れた朧行燈を枕元に点けて、夜明けが来るまで、寝ずに独り言を呟くのだという。

 すると、ちょうど夜が去り、薄明が地平をほの白く燃やす頃、行燈から子どもの声がし始める。

 初めはどこか遠いところで遊んでいるような声だが、少しずつ近づいてきて、やがてはこちらへ話しかけて来るので、答えてやればよいのだ。

 ひとしきり話をして、いよいよ太陽が東の空に昇り切る頃には、その声もようよう遠ざかり、消えていくだろう。

 後は、朧行燈の火を消した後、忘れずに彼岸飴を紙に包んで、部屋の隅に置いておくことだ。

 この会話で何が得られるわけでなく、よくある話のように、未来予知や吉凶の託宣と言った芸当ができるわけではないが、それでもアケガタリに会おうとするものは少なくない。

 寂しさを埋めるには、最もよい妖怪だと言われている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アケガタリ 安良巻祐介 @aramaki88

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ