伊吹さん、祭りではしゃぐ

　仕事で一人、田舎を訪ねた伊吹雅仁は困っていた。
　なんせ、彼の親友である矢田君を怒らせてしまったからだ。
　詫びの印に何か気の利いたお土産をこさえようとするが、田舎ゆえに何も無い。
　あると言えば、真冬の二月に行われる夏祭りぐらい。
　どうしたものかと悩んでいた彼に、タクシー運転が十二年前に起こった、天狗に殺されたと言われる殺人事件の話を聞く。
　ホテルの屋上で見つかったのは、首吊り死体。しかし、屋上では首を吊れるものも、吊れそうな場所もない。しかも、被害者が死の直前までいた部屋には鍵がかかっており、尚且つ部屋の鍵はその部屋の中にあった。
　開いていたのは窓だけ。しかし、人が登れる高さでもなければ、降りられて無事な高さでもない。
　なのに、何故、首を吊った被害者は屋上で倒れていたのか。
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